NB-IoTを積極に取り入れている中国のIoT事情

IoT

昨今、インターネットや紙面等でIoTという言葉を見るようになり、日本でも農業、医療等、様々な場所で取り入れられるようになりました。特に最近では各地で実証実験も頻繁に行われるようになっており、今後ますます普及していくことが予想されます。

IoTを提供する通信技術は多数ありますが、その中でもモバイル通信を活用したNB-IoTはLPWAの一つとして注目され、特に中国ではNB-IoTの活用に力を入れています。
この記事では、NB-IoTを積極的に取り入れている中国の事例について紹介します。

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NB-IoTは2016年に標準化は終わっているが普及はこれから

2016年に標準化(3GPP Release13)されたLPWAの一つであるNB-IoTですが、実際に商用サービスを大規模に行っている事例はほとんど聞きません。日本でも2017年からNB-IoTを利用した実証実験がいくつか行われ小規模な商用サービスは始まっていますが、多数のデバイスを利用した大規模なユースケースはまだありません。

諸外国に目を向けてみると、米国では2018年にようやくNB-IoTのインフラ整備が終わり、2019年7月にAT&Tが国内で初めてNB-IoTを利用した物品管理サービスを開始したという状況で、まだまだこれからです。これはオーストラリアやヨーロッパ諸国でも同じような状況です。

このような状況の中、NB-IoTに関して圧倒的な規模で商用展開を行っている国が中国です。

IoT市場が盛り上がっている中国

中国のIoT市場は非常に盛り上がっており、身近なところではMobikeやOfoなどが提供しているシェアサイクリングや監視カメラなどでIoTが利用されています

Mobikeは中国でいち早くシェアサイクルを開始し、現在では数百万台の自転車を保有しているといわれていますが、このMobikeの自転車を管理するための通信手段としてLTE-Mが利用されています。LTE-Mは、LPWAの一つでありセルラーネットワークを利用したIoT向けの技術です。

LTEを利用したIoT技術NB-IoTとは? - 仕様やLTE-Mとの違いを解説 -
LTEを利用したIoTの通信技術である「NB-IoT」とは一体どういうものなのか?本記事では、NB-IoTの仕様や特徴についてLTE-Mと比較しながら簡単に解説をしています。

一方Ofoは、サービス開始こそMobikeより遅かったが、いくつかの大企業からの出資を受け、今は中国で最大手のシェアリングサービス提供者であり、自転車の台数も1,000万台に近い数を保有しているといわれています。Ofoは自転車の管理にはNB-IoTを利用しているので、Ofoだけでも既にかなりの数のNB-IoTのユーザが存在することになります。

シェアサイクル事業者がLTE-MやNB-IoTを利用する大きな理由は、これらが省電力であることはもちろんですが、それ以外にも既に利用可能エリアが十分に広がっているということが挙げられます

IoTデバイスが通信を行うためには何かしらの電源が必要となり、継続して利用するためには定期的に充電を行う必要がありますが、Ofoが利用しているNB-IoTはLTE-Mと比較しても省電力であることからバッテリーが2年程度持つとされており、つまりは2年間はバッテリー交換を行う必要がありません。これによってバッテリー交換を行うための人件費を大幅に削減することが可能となっています。

また、LPWAの技術としてはNB-IoT以外にもSigfoxやLoRa、Wi-Fiなどありますが、市内をあちこちに移動するようなシェアサイクルのようなサービスでは、通信エリアが広いことが絶対条件となります。従って、このようなモビリティを伴い省電力が要求されるサービスには、セルラーを利用したNB-IoTが最適な技術となります。

LPWAとは?今注目の6つのLPWA規格を比較
IoTで重要となるLPWA(Low Power Wide Area)とはどういうものなのか?この記事では、LPWAの概要ならびに今注目されているLPWAの6つの主要技術(ELTRES,Wi-FiHaLow(802.11ah),Sigfox,LoRaWAN,LTE-M,NB-IoT)についてわかりやすく比較をしています。

中国の深センではスマートウェーターにNB-IoTを活用

中国の深センでは、China TelecomがスマートウォーターにNB-IoTを使っています

水道に関しては、家庭や企業での水の使用量の確認、水を送るための配管の漏れの確認、貯水池における水位や水質の確認などすべて人手を投入して行っていましたが、このスマートウォーターでは、これらすべての計測・確認をセンサーが行い、そのデータをNB-IoTを利用してセンターに送信しています。

IoTは20年以上前から使われておりますが、これまでのIoTモジュールでは消費電力が大きすぎてスマートウォーターのようなサービスは実現できませんでした。家庭の水道メーターだけであれば家庭から電気が取れる可能性もありますが、配管や貯水池などでは場所によっては電気を取ることができない為、センサーや通信モジュールに大容量のバッテリーを積む必要があり、そのコストが非常に大きくなっていました。

China Telecomは、これらの悪条件でも消費電力を抑え、かつ高品質で確実にデータを取得することを考慮し、LPWAの中でも品質基準の高いNB-IoTを採用し、2020年までに50万台のNB-IoTを搭載した水道メーターを設置する予定となっています。

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鄭州市ではバイクの盗難防止にNB-IoTを活用

中国は世界最大のバイクの生産・販売国であり、市民の移動手段としてバイクは重要な役割を果たしています。このように重要な役割を担っているバイクですが、いくつか問題もあります。中国の鄭州市の窃盗のうちなんと70%がバイクの窃盗です。また、交通事故のち30%はバイク絡みの事故となっています。最近の中国のバイクはガソリンエンジンではなく電動なので、近づいてきても音がほとんど無く気づかないことが多く、それによる事故も増えている可能性があります。そして、もう一つバイク絡みでの問題としては、火事の9%はバイクによるものだそうです。これもすごい確率ですよね。

この課題に立ち向かったのが、中国最大手の通信事業者であるChina Mobileです。

China Mobileは、GPS、中国の衛星測位システム、NB-IoTを搭載したIoTモジュールをバイクに搭載し、バイクの位置情報を確認できるようにしました。また、火災報知器をバイクに搭載し、火災が発生した際のアラートを上げることもできる仕組みになっています

NB-IoTは既存のセルラー網を利用することが可能であることから、新規で基地局展開などは不要であり、その上利用可能エリアも広い為、比較的準備期間が短くかつ低コストでの導入が可能となっています。そのため、このバイクの盗難防止にもNB-IoTが採用されています。2019年7月現在では、NB-IoT搭載したバイクは300万台を超えています

上海市ではマンホールにNB-IoTをつけてガス漏れ監視

China Telecomは、上海市において消火栓の水圧の管理、ガス漏れ、煙探知、環境モニターにNB-IoTを活用しています既に市内に50万台のNB-IoTデバイスを設置して監視をしていますが、中にはマンホールに設置して地下のガス漏れや地設備の監視を行っているものもあります。

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様々なユースケースが生まれる中国ではIoTはますます盛り上がる

シェアサイクル、スマートウォーター、バイクの盗難防止、ガス漏れ監視以外にもたくさんの事例が中国にはあります。例えば、洗濯機や冷蔵庫にNB-IoTをつけて、どのような地域で売れており、どのような使い方をしているかをモニターして、故障時の早期対応や便利な備品の追加販売などに役立てるという試みもあります

このようにトライ・アンド・エラーを基本とする中国では次々と新しいIoTの使い方が実現され、今後も多数のユースケースが生まれてくるので、IoTで世界のトップを走る中国は今後も注目です