日本で2020年春に開始予定の5Gは、世界25か国で既にサービスが開始されています。さらに世界で一番初めに5Gスマホを発売した韓国では、5Gスマホの台数が2019年末時点で670万台を突破しています。この記事では、海外の5Gの状況と1年半遅れの日本が海外に対してどのように対応していくかについて解説しています。
日本の通信事業者3社は2020年春からサービスを開始予定

日本の通信事業者3社は、5Gを2020年の春に開始すると発表しています。ただし、各社とも2020年春のサービス開始前に5Gプレーサービスを行うと発表しております。
例えば、ドコモはラグビーワールドカップ2019のサプライヤーでしたが、ラグビーの試合会場8か所のスタジアムで5Gを利用し多視点で同時視聴できるマルチアングル視聴をドコモが準備する5G端末で楽しむことができるサービスを提供しました。また、東京スタジアム、横浜国際総合競技場で行われるラグビーの試合映像を、5Gを通じてベルサール汐留などの離れた会場に伝送し大画面に映し出すパブリックビューイングも提供しました。
ソフトバンクは、既にいくつかプレサービスを実施しており、7月に苗場スキー場で行われたFUJI ROCK FESTIVAL ’19においてフジロックの YouTube 公式チャンネルがライブ配信する映像を5Gを通して会場内のソフトバンクブースにあるVRヘッドセットで視聴するサービスを提供しました。また、8月にはバスケットボールの日本代表戦においてバスケットゴールなど特別な場所に設置したVRカメラなどで撮影する試合の模様を会場内のVRヘッドセットやARグラス、タブレットに提供するサービスを行っています。
ドコモ、ソフトバンクが積極的に5Gプレサービスを行い5Gのアピールをする一方でauからは未だにプレサービスに関する詳細の発表はありません。他社に遅れているわけではないのでしょうが、今後の動向が気になります。
米国、韓国は2018年から5Gサービスを開始、韓国では5Gのスマホユーザ200万台突破!
日本では2020年まで5Gサービスが開始されませんが、世界では2018年からサービスが始まっています。世界の先陣をきったのは米国であり、2018年10月1日にヒューストン、サクラメント、インディアンポリス、ロサンゼルスの4つの都市で5Gサービスを開始しました。米国に引き続き、2018年12月には韓国でも5Gサービスが開始されています。
2018年に提供された5GはWi-Fiルータによるサービスであり、この時点ではスマホによるサービスは提供されていませんでしたが、2019年4月に韓国で初めて5Gのスマホサービスが開始されたのを皮切りに現在では多くの国で5Gのスマホサービスが提供されています。
5Gサービスの勢いや人気も上々で、2019年4月にスマホによる5Gサービスを開始した韓国では5Gスマホの販売開始から2か月で100万ユーザを突破し、2019年末には700万台近いユーザが5Gを使っています。韓国では4Gユーザを5Gへ促すことも考慮しかなりのインセンティブを導入して5G加入者を増やしていることもあり、かなりの勢いで5G加入者が増えています。
海外の5G事情 – 世界で初めて5Gのスマホを発売した韓国の事例 –
世界では約30か国で5Gサービスが始まっている!
4G LTEは、2010年に世界で初めて米国でLTEサービスが開始されたのを追う形で日本もサービスを開始しましたが、他国、特にヨーロッパ諸国ではLTEの導入にはそれほど積極的ではなくLTEの普及は非常にゆるやかでした。
では、5Gはどうでしょうか?
5Gは2018年開始されたばかりではありますが、現在は約30か国以上でサービスが開始されています。既にサービスが開始されている国を地図にまとめてみました。
LTEとは異なりヨーロッパ諸国が積極的に5Gを導入しており、さらにサウジアラビア、南アフリカ、ウルグアイなどこれまであまりセルラーの新技術に積極的ではなかった国でもすでに5Gが開始されています。
以下は5Gを開始している通信事業者をまとめたものです。2020年1月現在で約50社の通信事業者が5Gサービスを開始しています。
気になる5Gのサービスリアに関しては国によっては広がりが早く、特にスイスの通信事業者Sunriseは既に人口カバー率80%に達し、2019年でに90%に達している模様です。韓国もかなり積極的であり、2019年末で90%に達しているようです。
中国は2019年11月に3社一斉に5Gサービスを開始しましたが、サービス開始前から北京空港周辺では10万加入者が同時接続可能な基地局建設が終わっています。また2019年末で中国全土で15万局の基地局を建設した模様です。中国は他の国よりも遅れているとはいえ、それでも日本よりは早く何といっても世界的な通信インフラ・端末メーカーであるHuaweiの存在を考えると、すぐに他国に追い付くことが想定されます。
日本は1年以上の遅れにどう対応していくのか!?

他国より5Gサービス開始時期が1年以上も遅い日本では、どのように他国をキャッチアップしていくのでしょうか?
世界でスタートしている5Gですが、必ずしもすべてがうまくいっているわけではありません。提供している5Gは通信速度こそ早いものの5Gならではのサービスが提供できておらず、ユーザの満足度がそれほど上がっていない国もあります。一方、日本の通信事業者は早い段階から5Gのユースケースに注目しており、既に様々な企業とタイアップして実証実験などを行っています。
例えば、ドコモは幅広いパートナーと共に新たな利用シーン創出に向けた取り組みを拡大するために2018年2月に「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」の提供を開始し数百社の企業がこのプログラムに参加しています。
KDDIは、様々な企業と共に新たなビジネスソリューションを創出する5G、IoTのビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」を開設しており、ソフトバンクは、「5G×IoT Studio」のお台場ラボを実験機器や周辺機器、エッジコンピューティングを想定した高性能サーバーなどを設置した屋内トライアル環境として提供しています。
このように日本の通信事業者は5Gのサービス開始前から様々なマーケットとのタイアップを検討し始めていますので、他国で苦労している5Gならではのサービスを5G開始直後から提供できる可能性があります。また、他国での成功例や失敗例を分析しサービス開始に活かすことも可能であり、他国より大幅にサービス開始時期が遅れているとはいえ、まだまだキャッチアップできるチャンスはかなりあります。
何より日本では2020年には世界が注目するオリンピック・パラリンピックが開催されますので、2020年春にサービスを開始した後にオリンピックに向けて一気に5Gを盛り上げていくことも可能でしょうし、通信事業者もそのような計画をしているものと考えられます。