5G開始後1年半、ドコモ、au、ソフトバンクの5Gエリアを比較

5G

ドコモ、au、ソフトバンクが2020年3月に5Gサービスを開始してから、1年半が経過しました。2021年は東京オリンピックが開催され、また各社とも旧システムの3Gサービス終了に向けてユーザを5Gへシフトする為に、この1年半の間で5Gのエリア拡張やスマホ端末の5G対応に力を入れてきました。その結果、通信事業者から新たに発表されているスマホはほぼすべてが5Gに対応し、また廉価版の5Gスマホも普及しつつあります。

5G端末の普及は進んでいますが、肝心の5Gが利用できるエリアはどの程度広がってきているのでしょうか。

この記事では、ドコモ、au、ソフトバンクの5Gエリアが現在どこまで広がってきており、過去のエリア状況と比較してその進捗度がどの程度なのかを詳しく解説しています。

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加入者数が増えている5G

ドコモ、au、ソフトバンクの5G加入者の数は順調に伸び続けています。ドコモは2021年7月時点で5G加入者数が500万件に達しています。また、auでは2021年6月末時点での加入者数が340万件となっており、コロナ禍で外出が難しい環境であるにもかかわらず加入者数が増えています。

5G対応スマホの種類も大幅に増え、ドコモ、au、ソフトバンクでは、いずれも30種類以上のスマホが5Gに対応しています。また、5Gは高速・大容量サービスが一つの特徴となっている中、ドコモでは「らくらくスマートフォン」や「あんしんスマホ」といったデータ通信の利用頻度があまり高くない機種も5Gに対応させています。

このように、スマホ端末の5G対応は加速しており、2022年3月末までに各社とも一気に5Gへ加入者をシフトしていくことを計画しています。

5Gが使えるエリアは広がっているのか!?

それでは、肝心の5Gが利用可能なエリアは順調に広がっているのでしょうか。2020年に本格的にモバイル通信事業を開始した楽天モバイルからは、世界的な半導体不足の影響により4Gの展開が遅れているという報告がありましたが、半導体不足は、ドコモ、au、ソフトバンクの5Gエリア拡張に影響を及ぼしているのでしょうか。

5Gのエリア調査に関しては、前回2021年8月上旬に実施しているので、この時の5Gエリアと比較しながら、各社の進捗を確認してみましょう。

ドコモ、au、ソフトバンクの5G対応エリアはどこまで広がったのか?
ドコモ、au、ソフトバンクが5Gサービスを開始してから1年以上が経過しましたが、5Gが利用できるエリアはどの程度広がりを見せているのでしょうか。 前回2021年1月に確認した際のエリアと比較して、現状について3社を比較しながら詳しく解説をしています。

なかなか広がらないドコモの5Gエリア

まず初めにドコモの5Gエリアについてみてみましょう。

以下は、東京都内の2021年7月時点のエリアと2021年9月時点のエリアを比較したものです。

このエリアマップはドコモのホームページから取得したものであり、すべてが色づいているので一見5Gのエリアがかなり広がっているように見えますが、5Gに対応しているエリアはピンク色の場所とスポット的に緑のマークで記載されている場所のみです。

見てのとおり、7月時点と比較すると5Gエリアとしては面的に広がってはいますが、利用できる場所はまだまだ限定的です。都内においてもドコモの場合はほとんどが5Gの利用できないエリアであることがわかります。 では、続いて福岡県の中心部を比較してみましょう。

こちらも都内同様でピンク色の場所と緑色のスポット的な場所のみが5Gが利用可能なエリアとなります。天神周辺のエリアはこの2か月間でほとんど変化が無いようにも見えますが、中央区や博多駅周辺はかなりエリアが拡張されていることがわかります。ただし、福岡エリアについても東京都内と同じように5Gが利用できるエリアがかなり限定的であり、今後のエリア拡張が期待されます

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5Gエリアが一気に広がったau

それでは、続いてauの5Gエリアを見てみましょう。

こちらもドコモ同様にauのホームページから取得した情報を基に比較していますが、auはエリアマップの更新頻度が低いので、少し古い情報になっています。

まず初めに東京都内のエリアを比較してみましょう。

auは、エリアマップを更新するたびにマップの色を変えるので過去の状況と現状を比較することが非常に難しくなっています。上記マップの左側が2021年5月時点の5Gエリア、右側が2021年7月時点のエリアです。

5月時点のエリアマップでは、濃い紫、濃いピンク、濃い緑のみが5Gエリアとなっており、右側の7月時点のエリアマップでは、濃いピンクとオレンジのみが5Gのエリアとなります。

見てのとおり、この2か月間で5Gが利用できるエリアが一気に増えて、都心部では5Gのエリアが面的にカバーされていることがわかります。2021年6月には山手線の全30駅を5Gエリア化したとの報道発表もあり、都心部の5Gエリア展開がかなり速いスピードで進んでいます。

続いて福岡県の中心部のエリアを比較してみましょう。

こちらのエリアマップも都心部同様に色が統一されていないので非常に比較をしづらいのですが、左側の5月時点のエリアマップでは、濃い紫、濃いピンク、濃い緑のみが5Gのエリアです。オレンジ、黄色、うすいピンクは5Gエリアではないので、マップ上では全てが色でおおわれていますが、5月時点では5Gエリアは天神周辺と唐人町周辺のみとなります。

一方、右側の7月時点のエリアマップでは、ピンクとオレンジの部分が5Gエリアとなります。比較すると東京都内ほどではありませんが、こちらも5Gの面的な広がりがわかります。

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5Gエリアが圧倒的に広いソフトバク

続いてソフトバンクの5Gエリアの比較です。

まず初めに東京都内の5Gのエリア比較です。

左側のエリアマップは2021年6月末時点、右側のエリアマップは2021年8月末時点の状況となります。

ソフトバンクは以前から5Gのエリアがかなり広がっていたので、この2か月間でのエリア比較をしても、それほど大きな変化は見られません。ただし、よく見ると細かいところで5Gのエリア化が進んでおり、例えば東京タワーの北側や江東区では、今まで5Gのエリアではなかった場所が5Gに対応しています。

続いて愛知県の名古屋市周辺を見てみましょう。

こちらも東京都内同様に一見変化が無いように見えますが、細かく見ると6月時点では5Gのエリアではなかった場所が新たにエリア化していることがわかります。

ソフトバンクの場合、既に5Gがかなり面的に広がっており、現在はエリアの端(フリンジ)を埋めていくという非常に大変な拡張作業をしている為、エリアマップ上では違いがあまり見えてきませんが、ユーザ利用の観点では5Gのエリア品質はかなり向上していると想定されます

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5G対応エリアで見劣りするドコモ

最後に東京都内の5Gエリアをドコモ、au、ソフトバンクの3社で比較してみましょう。

3社のエリアマップの色が異なるので見づらいのですが、前回調査した8月同様にソフトバンクの5Gエリアが他社と比較して圧倒的に広がりを見せています。ただし、前回調査と大きく異なるのは、auもかなり追い上げており、auも都内ではかなりの場所で5Gが利用できることがわかります。一方でドコモの5Gはほとんどの場所で利用することができず、5Gを利用するためにわざわざエリアを探さなくてはいけないレベルです。

では、何故ドコモの5Gエリア拡張は他の2社と比較して遅れているのでしょうか?

それは、ドコモが利用している周波数とauやソフトバンクが利用している周波数が異なるからです。

5Gでは、Sub6(サブシックス)と呼ばれる6GHz以下の周波数帯(3.7GHz、4.0GHz、4.5GHz)とミリ波と呼ばれる28GHz帯の周波数が5G用の周波数として各社に割与えられました。ところが、2021年に入り、auやソフトバンクは、これまで4Gで活用していた周波数を5Gに転用することを発表し、これによって2021年10月時点ではドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は、以下の周波数を5Gに活用しています

見てのとおり、ドコモと楽天モバイルは5G用として割り当てられた周波数のみを活用して5Gエリアを構築していますが、auとソフトバンクは5G用の周波数と合わせて4G用に割り当てられた周波数も5Gに活用しています。

4G用の周波数を5Gに活用することで、何故エリア展開が加速するのでしょうか?

auとソフトバンクは4G用の周波数を活用することで、既存の4Gシステムをうまく活用することが可能となります。つまり、両社は4Gで導入したシステムをソフトウェア更新(多少のハードウェアの入れ替えが必要な場合もあり)するだけで5Gに転用できるのです。通常であれば新規にシステムを構築する必要がある為、5Gをエリア化するための工事期間がかなり必要となりますが、既存4Gシステムと4G周波数を活用することで通常の方法と比較して容易に短期間で5Gをエリア化することができるのです。この為、auとソフトバンクの5Gエリア化はドコモと比較してかなり早くなっているのです。

それでは、ドコモは何故auやソフトバンクと同じように4Gの周波数を活用しないのでしょうか?

これにはいくつか理由があります。一つは、4Gの周波数を活用した場合、5G本来の超高速・大容量の特徴を活かせない為です。5Gの特徴の一つとして超高速・大容量通信が挙げられますが、これを実現するためには相応の周波数帯域幅が必要となります。周波数には帯域幅と呼ばれる幅があり、例えば700MHz帯では各社20MHz幅を持っています。一方で、5G用の3.7GHz帯では各社に100MHz分の帯域が割り当てられており、28GHz帯においては400MHz分の帯域が割り当てられています。この周波数の帯域幅が広いほど高速通信が可能となるのですが、700MHz帯などの4G用の周波数では5G用の周波数と比較して帯域幅が狭い為、期待されるほどの高速通信を実現することができないのです。ドコモは、4G周波数を利用することでユーザを混乱しかねないという理由で4Gの周波数を利用しないのです

周波数とは?4Gや5Gの周波数割り当てはどうなっているのか?
周波数とは何なのか?5Gでは日本そして海外ではどのような周波数が割り当てられているのか?この記事では周波数の概要と特長、そして国内の周波数割り当てだけではなく海外の5Gで利用されている周波数についてわかりやすく解説。

ただし、それだけが理由であるならば、通信速度が多少遅くても4G周波数を活用して5Gエリアを広げた方が良いのですが、それでもドコモが4Gの周波数を利用しないのは他にも理由があるからです。一つは転用できる4Gの周波数が無いということです。4Gの周波数を5Gに転用するためには4Gの周波数を空ける、つまりその周波数帯域を未使用状態にしなければなりません。その為には既存4Gユーザに他の周波数を利用してもらう必要がありますが、加入者数が多いドコモでは他の周波数にも十分な空きがなく、5G用に周波数を空けることができないことが想定されます

その他の理由として、既存のドコモの4Gシステムがソフトウェア更新などの簡単な手順で5G化できない可能性があるということが挙げられます。auとソフトバンクは、世界でシステムを展開しているグローバルベンダーの4Gシステムを利用しており、これらのシステムはグローバルで利用されていることから5Gへの移行が簡単にできるエコシステムとなっています。一方、ドコモの4Gは国内のインフラベンダーのシステムを採用しており、かつそれらにはドコモ独自の仕様が盛り込まれるなど非常に複雑であるため、そのシステムを簡単に5G化することができないのではないかと想定されます

このようにドコモでは、auやソフトバンクのように4Gの周波数を5Gへ転用することが容易ではない為、5Gのエリア化に関してはかなり厳しい状況です。しかしながら、ドコモは2022年3月までに5Gの加入者数を1,000万件にする目標を掲げるなど5Gに対して非常に積極的であるため、厳しい制約がある中でも今後一気に5Gのエリアを広げてくる可能性もありますので、今後も通信事業者各社の5Gエリア展開状況から目が離せません