ドコモ、au、ソフトバンクが5Gサービスを開始してから1年以上が経過しましたが、5Gが利用できるエリアはどの程度広がりを見せているのでしょうか。
前回2021年1月に確認した際のエリアと比較して、現状について詳しく解説をしています。
各社5G加入者は順調に推移
2020年3月に5Gが開始され、ドコモの5G加入者数は7月には500万を超え、auも5月時点で240万に達しています。ドコモは2022年3月に1,000万加入者、auは700万加入者を目標にするなど、これから来年3月にかけて5Gシフトが一気に進むことになります。
5Gへの移行を順調に進めるためには、5Gが利用できるエリアが広がっていることが必要不可欠です。各社とも計画どおりに基地局建設は進んでいるようですが、実際のエリアの広がりはどのように変化しているのでしょうか。

ドコモ、au、ソフトバンクそれぞれのエリア展開戦略は?
エリア拡張の為に基地局展開を急ぐドコモ
ドコモの5Gエリアの拡張状況を見てみましょう。以下は、昨年の11月末、今年の1月、そして最新の7月25日時点のドコモの都内エリアの比較をしています。
3つを比較して明らかなのは、基地局の数が劇的に増えているということです。緑色の印が既にサービスが開始されている5G基地局となりますが、今年の1月の状態と比べてもかなり増えており、更にほとんどの基地局が5Gの超高速サービスの提供が可能な28GHz帯の周波数を利用したミリ波対応しています。
ドコモは2021年6月までに5G基地局を10,000局建設する計画をしていましたが、コロナ禍であるにもかかわらず、計画どおりに進んでおり、そのことからもドコモが如何に基地局展開に力を入れているかがわかります。
ただ、一方で基地局展開が進んでいる割には、ピンクで表示される5Gエリアの面的な広がりが非常に狭く感じます。ドコモは、auやソフトバンクとは異なり、当面は5G用周波数(Sub6/28GHz)だけでエリアを構築する予定となっており、これらの周波数帯は4Gで利用している800MHz帯や2GHz帯とはことなり周波数が高く直進性が強いことから、障害物の多い都心部では思ったほど電波が飛ばないことが原因の一つではないかと考えられます。
以下は、2021年1月にドコモが計画していた2021年3月時点のエリア計画と現状の比較です。
こちら2つを比較すると明らかですが、当初の予定では5Gエリアが面的にかなり広がる計画となっていましたが、現状ではその半分にも及びません。基地局数が計画通りに建設されているにもかかわらずエリアの面的な広がりが計画どおりではないことから、想定以上に5G周波数の扱いに苦労していることが伺えます。
以下は、福岡の天神・博多駅周辺のエリアを比較したものです。
福岡に関しては、都内とは逆でスポット的な基地局の数はあまり増えていませんが、天神周辺が面的に大きく広がっています。都内ではなかなか新規で基地局を建設する場所を確保することが難しくなっていますが、天神エリアでは面的な広がりは実現できているので、今後は都内でも同様に面的な広がりをしていくことでしょう。ただし、2021年8月8日時点でドコモのホームページを確認するうえでは、2021年11月予想時点でも、上記3月の予想エリアにはまだ及んでいないようなので、面的な広がりはまだ当面先になりそうです。
4G周波数を有効利用してエリア拡張を優先するau
次にauの5Gエリアを見てみましょう。auは以前と同様に最新のエリアマップがホームページに反映されていない為、2020年9月、11月そして2021年5月のエリア比較になります。従って、auは2021年6月に山手線全駅を5G化したと発表していますが、このマップでは、まだいくつかの駅で5Gのエリア化ができていません。
auのエリアマップは、頻繁に色を変えており更にどんどん見づらい色になっていくため非常に比較がしづらいのですが、5Gが利用可能なエリアである緑、ピンク、紫のエリアはかなり面的な広がりを見せています。昨年11月時点と比較してもその差は一目瞭然です。これは、auが以前から発表しているとおり、4G LTEで利用している周波数を5Gに転用していることが要因であり、それによって既存の4G LTE基地局をソフトウェア更新だけで5G化できるため、一気にエリアが広がっているのです。そのエリアにあたる部分がマップの紫の部分になります。
4G LTEの周波数を利用することで5G展開のスピードが速くなるのですが、一方でデメリットもあります。5Gの周波数であるsub6と呼ばれる3.7GHz帯、4.5Ghz帯はそれぞれ100MHzあり、28GHzに関しては400MHzあります。一方でauが利用している4Gの周波数の帯域は20MHzであり、利用できる周波数の幅だけでも大きな差があります。また、周波数は高くなればなるほど直進性が強く電波が飛びにくくなる一方で、通信速度は速くなる性質があります。大きくこれら二つの要因によって、4G LTE周波数を活用した場合には、5Gのような超高速・大容量通信を実現することができません。ただし、5Gは無線区間のセットアップ時間が4Gと比較してかなり早く、また現時点では5G加入者もそれほど多くないことから、4Gよりは体感として速い速度が体感できることが見込まれます。

以下は、福岡県の天神周辺のエリアを比較したものです。
福岡エリアでは、都内とは異なり5G用周波数であるSub6を活用して面的なエリアを作っていることが分かります。昨年11月の状況と比較すると、この半年で5Gエリアは劇的に広がっており、更に天神付近では、今後も4G LTEの周波数ではなく5G用周波数を活用して展開していく計画となっています。
5G周波数で着実にエリア拡張しているソフトバンク
最後にソフトバンクの5Gエリアを見てみましょう。
ソフトバンクもau同様に4G LTEの周波数を5Gで利用していますが、それでも5G周波数を利用した5Gエリアの面的な広がりがかなりあります。また、5G周波数で対応しきれないエリアに関しては4G LTE用周波数を活用し、結果として都心部のかなりのエリアをカバーすることに成功しています。
昨年11月末時点の状況と比較しても、エリアの急拡大が一目瞭然であり、5Gの基地局展開にかなりの力を注いでいることが伺えます。 では次に名古屋駅周辺を見てみましょう。
名古屋エリアは都内とは異なり5G用周波数でエリア拡張をするのではなく、これまで構築した5Gエリアの外側に4G LTE用周波数を活用して5Gエリアを一気に広げています。その結果、5Gが利用できるエリアも劇的に広がっています。
5Gエリア展開はソフトバクが圧倒的に速い!
それでは、3社の都内のエリアを比較してみましょう。
都内の3社の5Gエリアを比較していますが、多少の地図の縮尺の違いはあるとはいえ、ソフトバンクの5Gエリアがドコモ、auと比較しても圧倒的に広いことがわかります。エリアマップで見る限りでは、ドコモとauにおいては5Gが利用できるエリアを探しながら利用する必要があるが、ソフトバンクの場合はほとんどのエリアで5Gを利用することが可能となっています。
エリア拡張と共に5Gを利用した新サービスに期待
2020年3月に5Gが開始されてから1年少々経過し、5Gのエリアも少しずつ広がってきています。2022年3月には、auとソフトバンクの5G基地局は50,000局に達する計画であり、いよいよ5Gのエリアが全国に広まります。また、2021年後半から2022年初頭にかけては、5Gの本命と言われているスタンドアローン(SA)方式と呼ばれるネットワークアーキテクチャが導入され、超低遅延などの5Gの特徴を活かしたサービスが開始されることが見込まれています。本来であれば東京オリンピックで5Gを活用したトライアルなどがもっと沢山見られたのかもしれませんが、それでも今年の後半から来年にかけて、いよいよ5Gの本格的なサービスがスタートしそうです。

