5Gサービスが開始されてから約10か月経過しました。昨年から今年にかけて、ドコモ、au、ソフトバンクは5Gのデータ容量無制限プランを値下げし、いよいよ5Gへの本格シフトに力を入れてきた状況です。
5Gが普及するためには、契約しやすい料金水準や対応端末の多様化も重要ですが、それと共に5Gエリアが十分広がっていることが条件となります。
前回調査した2020年11月から2か月経過しましたが、各社のエリアはどのように広がってきているのでしょうか。
5Gデータ利用量無制限プランはドコモが一歩リード
2020年12月から2021年1月にかけてドコモ、au、ソフトバンクは5Gのデータ利用量無制限プランの値下げを発表しました。まず初めに仕掛けたのがドコモ。ドコモは2020年12月3日に20GBで2,980円のプラン「ahamo」を発表し、その後、12月18日には現在提供されているデータ利用量無制限プランである「4Gギガホ」と「5Gギガホ」の料金をそれぞれ6,550円と6,650円と従来よりも1,000近く値下げすることを発表しました。
ドコモの大容量プランに対してソフトバンクはいち早く反応し、12月22日にデータ利用量無制限プランを4Gと5G共通で6,580円で提供することを発表しています。
ドコモとソフトバンクの対応に遅れをとったのがauですが、そのauもドコモの発表から約1ヶ月遅れて2021年1月13日にデータ利用量無制限プランをソフトバンクと同様に4Gと5Gで共通で6,580円で提供することを発表しています。
各社のデータ利用量無制限プランの料金をまとめると以下のとおりとなります。

auとソフトバンクは4Gと5G共に同じ料金設定であり、ドコモもそれらとほとんど変わらない料金設定となっています。一見すると3社横並びのように見えますが、この3社の料金プランではドコモが一歩リードしていると言えます。
3社の5G向けの料金プランは、スマホ利用時にデータ利用が無制限になるというプランですが、ドコモのプランに関してはスマホと合わせてテザリングも無制限で利用できるのです。つまり、ドコモの5Gスマホを契約すれば、モバイルルータのようにパソコンを接続しても無制限で通信をすることができるようになります。一方、auとソフトバンクは、テザリングでの利用は毎月30GBまでの制限付きとなりますので、外出先でパソコンやタブレットを頻繁に使うユーザや家にブロードバンド回線が無いユーザにとっては、ドコモのプランが一番魅力的になります。
昨今、コロナ禍においてはリモートワークが主流となりつつあり、家庭環境の関係で外で仕事をしなければならないユーザも結構いるかもしれません。今後のロケーションフリーな働き方の世の中を鑑みると、ドコモのテザリング利用無制限というプランはとても良いプランと言えるでしょう。
各社計画どおりエリア拡張するもミリ波には慎重!?
5Gサービスが開始されて約10か月経過しましたが、ドコモ、au、ソフトバンクの5Gエリアは順調に広がっているのでしょうか?
前回同様に以下の各社のサイトでエリアの状況を確認してみました。

ドコモは今後一気に拡大する予定であるがミリ波は慎重に展開か!?
ドコモの都内のエリアを2か月前と現在で比較してみました。
上図の赤枠で囲った新宿周辺や渋谷周辺で多少ですがエリアが広がっていますが、それ以外のエリアでは大きな拡張は見られません。一方、青枠で囲った部分ですが、文京区、台東区近辺では2020年11月の時点ではほとんどミリ波に対応する計画となっていましたが、2021年1月の計画では、枠内のすべてがミリ波非対応となっています。更にもう一つの青枠で囲った江東区に関しては、以前の計画でミリ波展開予定となっていた箇所が現在は5G展開計画自体が無くなっています。
以下は福岡の天神・博多駅周辺のエリアを比較したものです。こちらは赤枠で囲った博多駅周辺の1局が当初予定どおりサービスを開始しています。このエリアはミリ波にも対応する計画でしたが、その計画どおりミリ波にも対応しています。
このように、ドコモに関してはエリアの広がりもまだそれほど見られず、かつミリ波については大部分のエリアで計画が見直されており、5Gのエリア展開に関して右往左往しているように見受けられます。ただし、2020年11月時点も現時点でも2021年3月末の時点でのエリア展開予定にほぼ変更はなく、3月末にはかなりのエリアができる計画となっているので、今後2か月で一気に5G展開が進む可能性があります。
4Gの周波数3.5GHzと700MHzを転用してエリア展開を急ぐau
続いてauのエリアを見てみましょう。
auは相変わらずホームページのエリア更新が遅く、2021年1月現在ではホームページで確認できるエリアは2020年11月時点の情報になっています。前回の情報が2020年9月の情報でしたので、この2か月間でどの程度エリアが広がったのか、以下のとおり比較してみました。
auは比較的2020年9月時点での計画に従って5Gのエリアを広げています。上図の赤枠のエリア、巣鴨駅周辺や秋葉原駅周辺を見ると、着実に5Gのエリアが広がっていることがわかります。それ以外でも新宿駅、渋谷駅、皇居の周辺など多数のエリアで5Gが拡張されていることがわかります。
一方、青枠で囲った部分は、2020年9月時点ではミリ波対応する計画であったにもかかわらず、2020年11月時点ではミリ波対応しない計画に変更となっています。青枠以外でも同様の箇所がいくつかあり、auもドコモ同様にミリ波の展開には慎重になっているようです。
ただし、ドコモとの大きな違いは、auは4G用の周波数である3.5GHzと700MHzを5Gに転用する計画があり、それが2020年11月のエリアマップのピンク色の部分になります。先ほどの青枠で囲った豊島区のエリアでは、ミリ波が無くなった代わりに3.5GHzか700MHzを利用する計画に変更になっています。その他の場所でもピンク色のエリアはかなり多いことから、auはミリ波を利用して通信速度を上げていくのではなく、3.5GHzや700MHzといった4G周波数の転用でエリアを広げていくことを優先しているように見えます。
不透明なソフトバンクだがエリアは一番広い?
ソフトバンクの5Gエリアですが、au同様にホームページの更新が遅く、2021年1月現在ではホームページで確認できるエリアは2020年11月時点の情報になっています。前回の情報が2020年10月時点の情報でしたので、差分はわずか1ヶ月となります。
上図のとおり比較してみるとほとんど変化がありません。黒枠で囲った部分で対象のエリア拡張が見られますが、それ以外のエリアでは変化がありません。
以下は名古屋エリアの比較ですが、こちらは全く変化がありません。1ヶ月の差分なので仕方ないのかもしれません。
このようにソフトバンクに関しては前回調査からあまり差分が無いように見受けられますが、一方でソフトバンクの5Gエリアはかなり広がっており、3社の中では一番エリア展開が早いという情報もあります。今回確認できた情報は2020年11月時点のものですが、今後マップが更新される際に一気にエリア拡張が見られる可能性はあります。
また、ソフトバンクはドコモやauのようにSub6、ミリ波、4G周波数など利用している周波数を明確にしていないのですが、ドコモとauがミリ波に慎重になりつつある状況でソフトバンクがどのようにミリ波を扱っているのかは気になるところです。
コロナ禍でも2021年は5Gエリア展開加速
以前もお知らせしたとおり、ドコモ、au、ソフトバンクの5G基地局展開計画は以下のとおり当初よりかなり前倒しになっています。
auは2021年3月までに10,000局、ドコモは2021年6月までに10,000局の5G基地局を建てる計画となっていますので、両社ともにこれから数ヶ月で一気にエリア展開が加速されるでしょう。そして、具体的な計画は明確にしていないソフトバンクですが、恐らく現時点ではエリア展開が一番早く、今後は4Gの周波数を転用することで更に加速していくことが予想されます。
今年は楽天モバイルも4Gと合わせて5Gのエリア拡張に力を入れてくる可能性があり、更にモバイル事業者以外の事業者が展開してくるであろうローカル5Gに対抗するためにも各社5Gエリア拡張に力を入れてくるので、今後も5Gのエリア展開から目が離せないでしょう。