LTEを利用したIoT技術NB-IoTとは? – 仕様やLTE-Mとの違いを解説 –

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NB-IoTとは? – 仕様やLTE-Mとの違いについて解説 –

IoTという言葉と共によく目にするようになりましたが、同様に最近よく聞くLTEを利用したIoTの通信技術である「NB-IoT」とは一体どういうものなのか?
本記事では、NB-IoTの仕様や特徴についてLTE-Mと比較しながら簡単に解説をしています。

NB-IoTは3GPP標準で規定されたセルラー用のIoT向けのテクノロジー

NB-IoTは、Narrow Band IoTの略であり、セルラーの標準である3GPPのRelease.13で規定されているIoT向けの仕様です。セルラーのテクノロジーは、これまで大容量、高速通信を中心に仕様策定がなされてきましたが、IoTは省電力、低コスト化、多数接続というこれまでのデバイスの特徴とは大きく異なるため、3GPP Release.13ではこの特徴に対応するためにNB-IoTという仕様を策定しています。

NB-IoTはLPWA(Low Power Wide Area)の一つであり、LPWAにはNB-IoT以外にSigfoxやLoRaなどがあります。

NB-IoTはIoT向けの無駄のない仕様

NB-IoTはIoT向けの仕様となっていますが、従来のスマホ向けの仕様と何が違うのでしょうか。

これまで利用してきたスマホの仕様はRelease8で標準化されたCat-4、NB-IoT同様にRelease13でIoT向けに標準化されたLTE-Mと比較してみました。

LPWAテクノロジー比較

まず、通信速度を見てみるとスマホ向けの仕様Cat-4が150Mbpsのダウンロードスピードであるのに対し、NB-IoTはわずか50Kbpsとなっています。そして、デバイスから基地局向けの上りの通信速度に関しては、Cat-4が50Mbpsに対しNB-IoTはシングルトーンで20Kbps。、マルチトーンで50Kbpsです。

周波数帯域幅を比較してみるとCat-4では20MHzを利用するのに対し、NB-IoTはわずか180KHzしか利用しません。Cat-4の約20分の1の帯域幅で通信が可能となるので、非常に効率的です。

セルラーを利用したIoTはこれまでも多数の事例がありますが、いずれもCat-4に準拠したデバイスを利用しています。従って、例えばスマートメータが30分に1回電気使用量を送信する際にも、非常に小さなデータ送信であるにもかかわらず通信速度が50Mbpsのネットワークを利用して、20MHzもの周波数を利用して通信が行われており非常に効率が悪くなっています。

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NB-IoTは省電力によりバッテリーの寿命も10年以上!?

IoTで必ず課題となるのは消費電力です。スマホでは、利用者がバッテリーの残量を確認し必要に応じて充電を行うことができますが、IoTの場合は設置をした後に効率的にバッテリーを充電することが容易ではありません。従って、従来のIoTではバッテリーを考慮して常時給電できる環境での利用にとどまっていました。

例えば、スマートメータであれば家屋やマンションに電気が供給されているのでその電気を利用することが可能であり、車であればバッテリー、自動販売機やエレベータもそのもの自身に供給される電気を利用することでIoTデバイスへの給電が可能です。

NB-IoTではこのバッテリーの問題を解決するためにいくつかの工夫がされており、それにより消費電力が抑えられバッテリー交換を最長で10年以上行う必要がありません。バテリーが10年以上充電なく利用できれば、これまで不可能であった給電が難しい農地、山岳地帯、河川などあらゆる場所でIoTが利用できる可能性が出てきています。

基地局からのメッセージ受信間隔を広げ省電力化 -eDRX

セルラーデバイスでは、省電力を実現する為にバッテリー消費の大きな原因となっている基地局とのやり取りの回数を減らす必要があります。例えばスマホは常に基地局とやりとりをしており、1.28秒に1回の割合で基地局からのメッセージ(ページング)を受信し、スマホ宛てに電話、SMSが来ていないかを確認しています。IoTデバイスの場合はそもそも送受信するメッセージがスマホと比較して少なく、例えばスマートメータでは30分に1回しかメッセージを送信していないし、自動販売機の在庫在庫情報やガスメータのガス使用量は1日1回程度であり、その他ではもしかしたら1か月に1回程度の通信で問題ない可能性もあります。従って、1.28秒に1回の割合で基地局からのページングを受信する必要など全くありません。

この無駄を解決するために生まれたのがeDRX(extended Discontinuous reception)という技術です。DRXというのが先ほどの基地局とのやり取りを行う間隔そのものであり、3GPPではこれをNB-IoT用に拡張しています。どのくらい拡張したかというと、なんと最長で2.91時間まで拡張されています。すなわち、端末は最長で2.91時間に1回の割合で基地局からのページングメッセージを受けるだけでよく、この最長時間を使った場合、1日約8回のアクセスのみで済みます。これだけでIoTデバイスの消費電力を大幅に削減することができます。

電源オフと同じ状態を実現 -PSM

デバイスの省電力を実現するために、PSM(Power Saving Mode)という技術があります。先ほど説明したeDRXは基地局とのやり取りをする回数を減らすための仕組みでしたが、PSMというのは端末を電源をオフにした状態と同じ状態にすることができます。端末の電源をオフにすることができれば、それだけで大幅に消費電力を削減することができます。

では、PSMを使ってどのくらいの時間電源オフと同じ状態を保つことができるのでしょうか。3GPP標準では、最長で9,920時間、すなわち413日と8時間という規定があり、この間電源オフと同じ状態にデバイスを遷移させることができます。1年以上ってすごいですよね。

実際のユースケースでは、1年以上通信を行わないデバイスはあまりなく、またメンテナンスなどの用途からPSMの設定はもっと短くしているケースが多いようです。

NB-IoTはようやく環境が整い普及はこれから

NB-IoTは2016年に3GPPで標準化されましたが、各通信事業者のインフラ対応が2017年から2018年にかけてようやく終わり、実際にNB-IoTデバイスが広く普及していくのは2019年以降になりそうです。世界に目を向けると中国が積極的に取り組みを行っており、既に多数のデバイスを中国国内で利用していますが、その他の国は日本同様に実証実験を行ってはいるものの実際の商用サービスを行っている事例はまだまだ少ないです。

しかしながら、セルラーのエリアをそのまま利用することが可能であり、他のSigfox、LoRa等の他のLPWSと比較してサービスエリアが広い為、例えば物流関連の物品管理などモビリティのあるようなモノや、河川、山間部など郊外エリアで利用するようなケースを含めてあらゆるケースで利用されていくことが想定されます。