最近よく耳にするようになった「LPWA」という言葉、これはいったいどういう意味なのでしょうか。
本記事では、この「LPWA」を簡単に解説しています。
LPWAはセルラー技術と短距離通信技術の間を補完
LPWAとは、Low Power Wide Areaの略であり、その名のとおり省電力(Low Power)で広範囲/長距離(Wide Are)を実現するための通信技術になります。
通信技術には、スマホやWi-Fiルータなどのセルラー技術とワイヤレスイヤホンやマウスで使われるBluetoothや最近ではユニクロの値札などにも使われるようになったRFIDなどの短距離通信技術がありますが、このLPWAというのはちょうどその間を補完する技術になります。
LPWAはIoT向けに考案されたテクノロジー
では、この省電力で広範囲/長距離を実現する技術は何のために使われるのでしょうか?
LPWAはIoTに利用されることを想定しています。ここ数年、スマホやWi-Fiルーターなど人が通信を利用する以外に通信を行う「モノ」が増えてきており、例えば、自動車、監視カメラ、電気メーター、自動販売機の在庫管理、エレベータの監視などに使われるようになりました。このように通信を行うモノのことをIoT(Internet of Things)と呼んでいます。
これらのIoTの製品では、監視カメラのようにスマホと同じようにたくさんのデータ通信を行うような製品もあれば、電気メーターのように一日もしくは数日に数回の割合で非常に小さなデータかつ低頻度でしか通信しないような製品もあります。LPWAは、後者のように一回のデータ通信量がスマホのデータ通信量と比較すると小さく、かつその頻度が少ないものに最適な技術となっています。
IoTに適した低コスト
IoTは、スマホと同じ料金プランで利用することもできますが、データ通信量が少なくかつ通信頻度が非常に小さいので、基本料金と通信料金で1,000円以上となるスマホの料金体系では割高になってしまいます。また、IoTは利用する端末の数が多数になることが多いので、通信の基本料金と通信料金が高額では費用対効果が小さくIoTによる効率化が見いだせなくなります。つまり、今のセルラーのサービスでは、IoTにとってはオーバースペックとなっているのです。LPWAは、IoTデバイスの通信量と通信頻度を考慮したテクノロジーが備わっています。
IoTで重要となる低消費電力

LPWAがIoT向けに必要とされているもう一つの理由は消費電力です。
スマホの場合、ユーザが毎日充電をすることでバッテリーが切れることなく利用し続けることができますが、IoTデバイスも継続利用するためにはこの充電作業を誰かが行わなければなりません。例えば、自動車用のIoTや自動販売機用のIoTの場合、モノにバッテリーが搭載されているため、そこからIoTデバイスを充電することができます。
一方で、田んぼの水質を定期的に計測してデータを送信するIoTデバイスや自転車の盗難防止用に位置情報を定期的に送信する自転車用IoTデバイスなどは、IoTデバイスが実装されているモノにバッテリーが搭載されていないので、充電をすることができません。すなわち、バッテリーが切れたらが交換する必要があります。
このバッテリー交換作業の回数を極力減らすためには、IoTデバイスが消費する消費電力を極力抑える必要がありますが、スマホと同じ通信方式を利用する場合、数秒に1回の割合で通信基地局とデータのやり取りが発生するため、IoTデバイスのバッテリーがあっという間になくなってしまいます。LPWAはこのバッテリー問題を解決するための低消費電力を実現するためのテクノロジーも備わっています。
LPWAは、このように既存のスマホなどの通信テクノロジーとIoTデバイスが必要とするテクノロジーのギャップを解消するために考案されたテクノロジーになります。
LWPAはセルラー系と非セルラー系
LPWA用に開発されたテクノロジーはいくつかありますが、大きく非セルラー系とスマホと同じ携帯電話網を利用するセルラー系(3GPP標準)に分かれます。非セルラー系では、主なものとしてELTRES、Wi-FiHaLow(802.11ah)、Sigfox、LoRaWANなどがあり、セルラー系のテクノロジーでは、LTE-MとNB-IoT(Narrow Band IoT)があります。
各テクノロジーごとの特徴があるため、IoTデバイスをどのように利用するかというユースケースによって利用するLPWAテクノロジーを選択する必要があります。





LPWAはスマートメータやスマートホームなど身近なところで活用されていく

低消費電力で通信量が少なく通信頻度が低いLPWAはどのような場所で活用されていくのでしょうか?
LPWAの特徴を活かすことができる場所としては、電気やガスの消費量を測る電気メータやガスメータ、家のセキュリティ監視システム、一人暮らしの老人健康管理、魚の養殖場での水質・温度管理など様々な場所での利用が期待されています。
このように、今まで人手を介して行われていたことが、LPWAの普及とIoTデバイスの低価格化によって人手を介すよりも効率的に行うことができる可能性がある場所では、LPWAの利用が広がっていくでしょう。
LPWAは始まったばかりであるが、今後一気に広まる可能性も!

LTE-MやNB-IoTは、セルラーの標準化団体3GPPで2016年に標準化されました。その後、デバイスメーカーやインフラベンダーがこれらの技術を利用した製品を開発し、2017年から少しずつ通信事業者がLTE-MやNB-IoTに対応したインフラを整備し、これらのサービスが開始されました。同じく2017年には京セラコミュニケーションシステムがSigfoxサービスを日本で開始し、また同じ時期に多数の企業によってLoRAの提供も開始されています。
LPWAを利用したIoTはまだ始まったばかりです。日本国内では人口減少による人手不足が深刻な問題になりつつあるので、IoTを利用した業務の効率化は一気に加速することが想定されます。その際には、おそらくLPWAを利用したIoTデバイスが多数活用されることが期待され、それと共に一気にLPWAは広まることが想定されます。