LoRaWANとは? – LPWAの一つであるLoRaWANを簡単に解説

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LoRaWANとは? – LPWAの一つであるLoRaWANを簡単に解説

LoRaWANとは一体何なのか?また、LoRaとLoRaWANは何が違うのか?
この記事では、LoRaWANというものがどういうものであり、どのような特徴を持っているのかについて簡単に解説しています。

LoRaWANはLPWAの一つであり世界140か国以上で利用されている

LoRaWANは「Long Range WAN」の略であり、LoRa Alliance規定しているLPWAの一つです。LoRa Allianceは、2015年に設立された非営利団体であり、LoRaをオープンなグローバル標準として策定しています。この団体には世界各国の企業がメンバーとして参加しており、グローバルではシスコ、アリババ、Orange、SKテレコムなどが参加し、日本からも通信事業者であるNTTやソフトバンクをはじめ、NEC、富士通、村田製作所、ソラコムなどが参加しています。
参考:LPWAとは

LoRaWANは既に世界140か国で普及をしています。

出典:LoRa Allianceホームページより

各国で利用する周波数はLoRa Allianceで規定されており、日本では920MHzが利用されています。

出典:LoRa Allianceホームページより
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LoRaとLoRaWANの違い。LoRaは無線レイヤの規格

LoRaという言葉をネットで検索すると、それと似たような言葉でLoRaWanという言葉がよく出てきます。このLoRaとLoRaWANは同じものなのでしょうか?

LoRaは、物理レイヤもしくは無線区間の変調方式を表す言葉です。一方でLoRaWANは、通信プロトコルとネットワークアーキテクチャを表す言葉です。このようにLoRaとLoRaWANではそれぞれ違うものを示すのですが、一般的にはこれら全体をLoRaもしくはLoRaWANとして表現することが多くなっています。しかし、場合によってはLoRaとLoRaWANを区別していることがあるので注意が必要です。

LoRaWANの特徴(LPWA比較)

LoRaWANと同じようにLPWAのテクノロジーには、Sigfox、LTE-M、NB-IoTなどがありますが、これらと比較してLoRaWANはどのような特徴があるのでしょうか。

以下は、他のLPWAとの比較です。

主要LPWAテクノロジーの比較
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LoRaWANはSigfoxやNB-IoTと比較してオープン性が高いところが大きな特徴です。NB-IoTはセルラー技術によるLPWAであり電気通信事業者のみが提供可能なテクノロジーであり、SigfoxはフランスのSigfox社が指定した通信事業者(1国で1社のみ)のみ提供可能なテクノロジーです。それと比較してLoRaWANはLoRa Allianceが規定しているオープンな仕様に基づきモジュール、基地局(ゲートウェイ)の開発が可能であり、かつ免許不要なアンライセンスバンドで利用できることから、参入障壁が非常に低く、これが大きな特徴となっています。

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ネットワークアーキテクチャ

LoRaWANのネットワークは、デバイス、ゲートウェイ、ネットワークサーバ、アプリケーションサーバで構成されます。LoRaWANでは、基地局をゲートウェイと呼んでいます。

デバイスはセルラーのように特定のゲートウェイに位置登録をするのではなく、複数のゲートウェイと通信を行います。従って、仮にLoRaWANデバイスが移動をした場合でもハンドオーバは不要となります。

デバイスからデータを受け取ったゲートウェイは、そのデータをクラウド上にあるネットワークサーバへ送信し、ネットワークサーバ側で複数のゲートウェイから受信したデータを一つにします。また、ネットワークサーバはセキュリティチェックも行います。

出典; LoRa Alliance “Technology overview of LoRa and LoRaWAN

LoRaWANのデバイスは、クラスA、クラスB、クラスCの3種類

LoRaWANのデバイスは以下のとおり3つのクラスに分かれています。このうち、クラスAは必須仕様となっており、残るクラスBとクラスCはオプション扱いとなっています。

クラスA:Bi-directional end-devices
クラスB:Bi-directional end-devices with scheduled receive slots
クラスC:Bi-directional end-devices with maximal receive slots

では一つずつ内容を見ていきましょ。

クラスA:Bi-directional end-devices

クラスAのデバイスは、双方向通信が可能なデバイスです。デバイスからサーバへのデータ送信は自由に行えますが、サーバからデバイスへのデータを送信する際は、サーバがデバイスからデータを受信した直後に設けられる短いウィンドウを利用する必要があり、すなわちサーバからデバイスへのデータを送信するタイミングは、デバイスからデータを受領したタイミングのみとなります。このサーバからデバイスへの下りのデータ通信を制限する手法は非常にバッテリー利用効率がよく、3つのクラスの中ではクラスAがもっとも省電力となります。

クラスB:Bi-directional end-devices with scheduled receive slots

クラスBは、クラスAの機能に加えて、デバイスの受信頻度も上げることができます。クラスAでは、デバイスからデータを送信するときのみサーバからデータ受信が可能ですが、クラスBはこれに加えてあらかじめスケジュールしておいたタイミングでデータを受領することができます。このスケジュール機能を実現するために、デバイスはゲートウェイから時刻同期ビーコンを受信しネットワークと同期し、これによりサーバはデータを送信するタイミングをはかっています。

クラスC:Bi-directional end-devices with maximal receive slots

クラスCは、デバイスがデータを送信しているとき以外は常にサーバからのデータを受信することができます。

LoRaWANのユースケース

農業での活用

農作物には多々種類がありますが、中には日本の環境に適さない農作物もあります。そのような農作物では、他の農作物と比較してより環境を厳しく管理し、作物が一番育ちやすい環境を安定的に提供する必要があります。

環境を一定に保つためには定期的に温度、湿度、照度などのデータを収集し、データの変化に合わせて環境を調整していく必要がありますが、このデータ収集にLoRaWANが利用されているケースがあります。LoRaWANは省電力でバッテリーのもちがよく、さらに簡単にゲートウェイの設置ができる為、農地でも利用しやすくなっています。

河川の水位計測

河川の水位はゲリラ豪雨、台風、大型低気圧等で短期間に一気に変わる可能性がありますが、都度河川の水位を確認することは大変かつ危険です。そこでLoRaWANを利用して定期的に推移測定を行い、水位の状況を地域に配信して避難指示や避難所の開設に役立てているケースがあります。

地すべり予兆検知

日本国内いは10万か所以上の地すべり危険地帯がありますが、この地すべりの事前検知にLoRaWANが利用されているケースがあります。具体的には、危険地帯にあらかじめ傾斜計を設定し定期的に計測を行い、それがある閾値を超えるとアラームが上がるという仕組みです。地すべりはこれまは主に目視での事後確認がほとんどでしたが、この仕組みを利用することで地すべりを事前に把握し、被害を抑えることができます。

LoRaWANも他のLPWA同様に徐々に使われてきている

先のユースケースで紹介したとおり、SigfoxやNB-IoT同様にLoRaWANも徐々に用途が広がっています。特にLoRaWANはSigfoxやNB-IoTと異なり、利用した場所に自らゲートウェイを設置して利用することができるため、あらゆるところで利用しやすい仕組みになっています。現時点では、農業や危険予知など政府や大企業による導入が多くなっていますが、今後は中小企業や個人事業でもLoRaWANを利用したソリューションの導入が増えてくる可能性もあります。