5Gサービス開始から1年半、海外ではエリアはどこまで広がっているのか?

5G

2018年に米国で初めて5Gサービスが開始されてから1年半が経過しました。この間、世界各国で5Gサービスが次々と開始されましたが、5Gの品質やエリアはどのようになっているのでしょうか?

この記事では、米国の5Gの通信品質およびエリアの展開状況について解説をしています。

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世界の5Gサービス開始状況

日本では、ドコモが3月25日、ソフトバンクが3月27日、そしてauもおそらく3月中には5Gサービスを開始する予定となっていますが、海外では2018年から5Gサービスが始まっています。2020年1月時点で約30ヵ国が5Gサービスを開始しており、その中でも韓国と米国が5Gを牽引しています。

韓国では2019年4月に5Gスマートフォンを世界に先駆けて発売しましたが、その後8か月で加入者が350万人を超えるという勢いで5G加入者が伸びています。一方米国は、2018年のサービス開始当初はFWA(Fixed Wireless Access)と呼ばれる固定ブロードバンド回線の代替手段として5Gを利用するサービスを提供し、その後は韓国同様に5G対応スマートフォンを発売はしているものの、まだ爆発的な普及には至っていない状況です。

ピークレートはそれなりであるが平均スループットは今一つな米国の5G

米国では、Tier1オペレータであるVerizon、AT&T、T-Mobile、Sprintはもちろんのことそれ以外のUSセルラー、US Spire、Charter、Starryなども5Gサービスを開始しています。

5Gの特徴である高速通信ですが、通信速度の最大値(ピークレート)に関しては米国が他国を圧倒しています。しかしながら、それでも1.8Gbps程度であり、先日5Gサービスの報道発表を行ったドコモの当初の最速3.4Gbpsの約半分にとどまっています。ドコモの3.4Gbpsが理論値であり実測値ではない為、実際は3.4Gbpsよりも小さくなる可能性は高いですが、それでもピークレートに関しては1.8Gbps以上は期待ができるでしょう。

ピークレートは良い条件が整った際の最大の通信速度ですが、日頃のスマートフォン利用においてはピークレートよりも平均通信速度(スループット)の方が重要な指数となります。米国の大手通信事業者4社の平均スループットはどのようになっているのでしょうか?

以下のとおり、Verizonの平均スループットは700Mbpsを超えていますが、それ以外の事業者では300Mbps以下にとどまっています。日本の通信事業者が提供している4G LTEでは、時間帯や場所にも依存しますが、おおよそ200-300Mbpsのスループットが確保できていることを考えると、5Gで平均300Mbpsという速度はかなり遅いと言えるでしょう。

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米国の5Gエリアはまだまだこれから

2018年10月から5Gサービスを開始して1年半が経過しましたが、5Gのエリアはどのように広がっているのでしょうか?ベライゾンとAT&Tで5Gエリアの広がりについて比較をしてみました。

ベライゾンでは2020年3月現在で以下の34都市が5Gのサービスエリアとなっています。

ベライゾンの5Gエリア(都市)

アトランタ、ボイシー、ボストン、シャーロット、シカゴ、シンシナティ、クリーブランド、コロンバス、ダラス、デンバー、デモイン、デトロイト、グランドラピッズ、グリーンズボロ、ハンプトンローズ、ホーボーケン、ヒューストン、インディアナポリス、カンザスシティ、リトルロック、ロサンゼルス、メンフィス、マイアミ、ミネアポリス、ニューヨーク、オマハ、パナマシティ、フェニックス、プロビデンス、ソルトレークシティ、スーフォールズ、スポケーン、セントポール、ワシントンD.C.

一方、AT&Tに関しては30の州でサービスを開始しています。

AT&Tの5Gエリア(州)

アラバマ、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、ワシントンD.C.、デラウェア、イリノイ、インディアナ、ジョージア、カンザス、ケンタッキー、マサチューセッツ、メリーランド、ミシガン、ミズーリ、モンタナ、ニュージャージ、ニューメキシコ、ネバダ、ニューヨーク、オハイオ、オレゴン、ペンシルベニア、ロードアイランド、ユタ、バージニア、ワシントン、ウィスコンシン、ウェストバージニア

それでは、いくつかの都市で5Gのエリア状況を比較してみましょう。

いずれも両社のホームページの情報を参考に比較をしていますが、AT&Tのエリア情報はかなり大雑把であるため、Verizonのエリア情報で詳細な状況を確認してみましょう。

ニューヨーク
こちららはマンハッタン周辺の5Gのエリアカバー状況です。見てのとおり、いくつか場所ではサービスエリアとなってはいるものの、まだまだエリアの連続性が乏しく、また面的な広がりも少なくかなりスポット的なエリアが目立ちます。

ロサンゼルス
こちらはニューヨークとは異なり、特定のエリアに関しては連続的なエリアが確保できており移動しながらの利用も期待できそうです。ただし、それでも4Gのエリアと比較するとまだまだほとんどのエリアが5G圏外エリアであり、面的な広がりを確保するためには相当な時間を要することが想定されます。

ワシントンDC
ワシントンD.Cでは、これまでの二つの都市と比較して一部面的なエリアができています。地図右下のエリアはアメリカ合衆国議会議事堂周辺であり、地図の真ん中あたりはワシントン記念碑の周辺ですが、このあたりに関してはかなり広い範囲で5Gのエリアができていることがわかります。また、その他のエリアに関しても5Gが提供されている場所においてはスポット的ではなく連続的なエリアになっていることがわかります。

シカゴ
シカゴに関してはAT&Tはまだサービス提供を行っておらず2020年内にサービス化する計画となっていますが、Verizonは既にサービスを提供しています。こちらは見てのとおり、他の都市と比較するとかなり5Gのエリア化が進んでいます。

このように米国は5Gサービスを開始して1年半経過していますが、米国は国土が広いこともあり、サービスエリアの確保に関してまだまだ時間を要する状況となっています。

5Gエリア展開を急ぐ日本の通信事業者

ドコモ、au、ソフトバンクは、5Gの無線免許取得時に以下の計画で5G基地局を展開することを予定していました。

しかしながら、日本は世界に大幅に遅れて5Gを開始することになり、更に当初の想定よりも様々な産業で5Gへの期待が高まっていることなどから、国内通信事業者は当初の基地局展開予定を大幅に前倒する計画に変更しています。

ドコモは当初の計画を大幅に見直し、2021年6月までに1万局、そして2022年3月末までに2万局の基地局を設置し、2023年度中に人工カバー率97%を達成する計画にしています。また、ソフトバンクにおいても2022年3月末までに人口カバー率90%を達成できるように基地局展開を進める計画に変更されています。

米国の5Gエリア状況を見ても基地局展開やエリア確保は容易ではありませんが、日本国内では各社ともに5Gサービス開始からロケットスタートで基地局展開を行う計画であり、一気に他国を追い抜く可能性があります。