スマートフォンが国内に普及して10年近く経ちますが、今ではスマートフォンは生活の一部となり無くてはならない存在にまでなっています。日本で携帯電話サービスが開始されたのは1987年であり、それから33年で一気に進化を遂げました。
こちらの記事では、携帯電話サービスが開始されてから今に至るまでの歴史・変遷について、その時折の出来事を交えて解説をしています。
携帯電話がレンタル方式であった第1世代
日本で初めて携帯電話が登場したのは1985年9月です。携帯電話は当時はまだ今のように自由に持ち歩くことができず、自動車電話という位置づけでした。従って、この時に利用されていた日本電信電話(現 NTT)の携帯電話は車外で利用できる自動車電話であり、今の小型の携帯電話とは程遠い肩からかける「ショルダーフォン」でした。このショルダーフォンは、レンタルで提供され保証金が20万円、毎月のレンタル料が2万円以上と高額であったため、ユーザもかなり限られていました。
現在のような携帯電話サービスが開始されたのは1987年です。通信事業は従来電電公社が国営でサービスを提供していましたが、1985年に通信が自由化され、それにあわせて電電公社も民営化されNTTとなりました。また、1988年には日本移動通信(IDO 現KDDI)が携帯電話サービを開始し、1989年にはDDIグループ(現KDDI)のセルラー電話がサービスを開始するなどいくつかの通信事業者が誕生し、携帯電話サービスを開始しました。
このころの通信方式はアナログ方式で第一世代と呼ばれ、NTTはHICAPと呼ばれるNTTが開発した方式を採用し、IDOとセルラー電話はTACSと呼ばれる方式を採用しました。アナログ電話であったこともあり通話においては雑音が多く、時には通話中に切断されることもしばしばありました。
通信事業者が増え、携帯電話端末も従来のショルダータイプから小型化されましたが第一世代ではレンタル方式が継続されたこともあり、ユーザはまだまだ限られたものでした。
デジタル化され加入者が一気に増えた第2世代
第一世代ではアナログによる通信が行われていましたが、世界各国ではデジタルを利用した通信が検討されていました。デジタルにはいくつかの方式があり、ヨーロッパではGSMと呼ばれる方式が、米国ではCDMAと呼ばれる方式が利用される中、日本ではPDCと呼ばれる日本独自の方式が採用されました。
1993年にイギリスでGSMの利用が開始されると、日本でも同年にNTTドコモがPDC方式を利用したサービスを開始しています。また、日本ではそれまでNTTドコモ、IDO、セルラー電話の3つの通信事業者が携帯電話サービスを提供していましたが、1994年にはツーカーグループが1996年にはデジタルツーカーグループが携帯電話事業に参入しました。一方、当初よりNTTドコモと共にサービスを提供してきたIDOおよびセルラー電話各社は、NTTドコモ同様にPDC方式を採用しましたが、PDC方式ではいつまでもNTTドコモに加入者数で追いつくことは難しいと考え、1998年からcdmaOne方式を採用し、通信事業者間の競争も激化していきました。
この頃は、全国をサービスエリアとしていた事業者はNTTドコモのみであり、その他の事業者は地域ごとにサービスエリアが割り振られていたため、各事業者間でローミングを行っていました。
1994年にはそれまでレンタルで提供されていた携帯電話端末が、現在と同じように買取サービスに変更され、これにより保証金が不要となり月額基本料も見直しがされたため、携帯電話ユーザも大幅に増えていきました。
第二世代では従来とは異なる大きな変革が起こり、その変革が今のスマートフォンにも繋がっています。1999年にNTTドコモが世界に先駆けて携帯電話を利用したインターネットサービス「i-mode」を開始しました。それまで通話とSMSのみの利用にとどまっていた携帯電話でインターネットサービスを受けられるという画期的なサービスは当時とても注目され、これによって携帯電話ユーザも一気に増えていきました。
i-modeが提供された年にIDOおよびセルラー電話各社は同様に「EZaccess」「EZweb]というサービス名で携帯電話によるインターネットサービスを開始しています。i-modeの通信速度が9.6kbpsであるのに対しEZwebでは14.4kbpsと速度では上回り非常に期待されたのですが、i-modeがCompact HTMLという方式を採用してパソコンと同様にインターネット上のwebページをほぼ閲覧できたのに対し、EZwebではHDML方式が採用されたためにHDML専用ページしか閲覧できず、インターネット上のwebページを見るためにはコンバータが必要になるなど使い勝手が悪かったため、i-modeと比較すると残念ながら人気がありませんでした。
このころになると携帯電話の画面も少しずつ大きくなり、1999年にはカラー液晶も登場しました。また、1999年1月にはそれまで10桁であった携帯電話番号が番号不足により、現在のような11桁に変更になりました。
1999年8月には、デジタルツーカーグループとデジタルホングループが1社にまとまり、11月には「Jフォン」(現ソフトバンク)として全国統一した新たなサービスを開始しました。そして、今では当たり前になっているケータイ電話での写真の送付は、このJフォンが「写メール」という名前でサービスを開始することでドコモなど国内に広がり、そして世界的にも広がっていきました。「写メ」という言葉はこのときに生まれています。
スマートフォンの登場で携帯電話が生活の一部になった第3世代
2001年5月、NTTドコモが世界で初めて3Gサービス(W-CDMA方式)を開始し、その翌年にはKDDIがcdma2000 1Xで3Gサービスを開始いています。ドコモがサービスを開始した当初の通信速度は384Kbps、KDDIのcdma2000は144Kbpsであり、第二世代の通信速度と比較して飛躍的に速くなりました。ただし、それでも携帯電話端末は画面が多少大きくなったものの従来の電話型の携帯電話でした。

一方世界では、1999年にカナダのRIM社が発売したキーボードがついた携帯電話端末BlackBerryが人気があり、法人向けの端末であったにもかかわらずかなりの数の端末が出荷されました。また、2000年以降になるとスウェーデンのエリクソン社やフィンランドのノキア社からもスマートフォンタイプの携帯端末が発売され、世界ではスマートフォンの人気がどんどん増してきました。
そんな中、日本では変わらず電話型の携帯電話の利用が続いていました。これにはいくつか理由があります。この頃日本で使われていた携帯電話ではデコレーションメール、i-mode、ワンセグ、おサイフケータイなど多数の日本独自のサービスが多数提供されており、日本で発売される携帯電話端末ではこれらすべての日本独自のサービスに対応させる必要がありました。この為、このような日本独自の携帯電話は日本国内メーカしか製造することができず、また海外で開発されたスマートフォンではこれらのサービスを提供できないという理由から導入が見送られたのです。このように日本でしか利用できない独自仕様のサービスに対応した携帯電話はまさにガラパゴスであり、ゆえにこのような携帯電話をガラパゴスケータイ、つまりガラケーと呼ぶようになったのです。
日本でのスマートフォン普及の足掛かりとなったのは、やはり2008年にソフトバンクがiPhone3Gを発売したことが大きいでしょう。ソフトバンクのiPhone導入により瞬く間にスマートフォンは普及したのと合わせてソフトバンクの加入者もこれによって大幅に増加しています。iPhoneによる加入者獲得効果は想像以上に大きく、焦りを見せたKDDIは2011年にはiPhoneを導入し、そして最終的にはドコモも2013年からiPhone発売しています。
第三世代では端末以外に料金でもこれまでと大きく異なる変革がありました。第二世代までは完全従量制であったデータ通信において2003年にKDDIが定額によるデータ通信サービスを開始、またその翌年には当時としては画期的であった段階性の定額(ダブル定額)を発表しました。この段階性の料金は今でも日本のみならず世界各国で採用されています。
第三世代が開始された2001年には、世界で初めてとなるMVNOが日本通信により提供されました。この時は、日本通信が当時PHS事業を行っていたDDIポケット(現 ソフトバンク)から回線を借りてサービスをおこなっています。MVNO事業に関しては、この時から約10年後の2013年頃から一気に事業者が増え格安スマホとしてサービスを提供し、現在は国内で1,000社を超えるMVNO事業者がサービスを行っています。

スマートフォンが主流となった第4世代
4Gサービスは2009年にスウェーデンのTeliaSonera社が世界で初めてサービスを開始しました。世界の大手通信事業者はその翌年に4G LTEサービスを開始しており、国内ではNTTドコモが2010年12月に、米国ではベライゾンやAT&Tでも同じタイミングで4Gサービスを開始しました。そこから約2年後の2012年にはKDDIおよびソフトバンクも4Gサービスを開始しています。標準上では、4GはLTE-AdvanceもしくはWirelessMAN-Adcanced(WiMAX2)と呼ばれる方式をさし、当初はLTE自体は3.9Gと呼ばれることもありましたが、現在ではLTEを4Gとして扱うことも多くなっています。
現在利用しているスマートフォンは全て4Gに対応した端末であり、NTTドコモがサービスを開始した当初では通信速度が75Mbpsでしたが、今では1Gbpsを超える速度になっています。
2020年3月に日本でも開始された第5世代
2018年10月、米国のベライゾンが世界に先駆けて5G Homeと呼ばれる5Gサービスをヒューストン、サクラメント、インディアンポリス、ロサンゼルスの4つの都市で開始しました。Wi-Fi Homeは5Gに対応したWi-Fiルータで、主に家庭内のブロードバンドの代用として使われるサービスであり、通信速度は約300Mbpsとされています。ベライゾンから遅れること2か月、2018年12月に米国2位の通信事業者AT&Tもモバイルルータを利用した5Gサービスを開始しました。
世界初の5Gサービス提供は米国に譲った韓国ですが、2019年4月、韓国は世界で初めて5Gのスマートフォンの提供を開始しました。韓国は5Gの普及に力を入れ、5Gスマートフォンの販売開始からわずか2か月で100万ユーザを突破しています。
そして、米国、韓国以外でも5Gの導入には積極的であり、2020年11月現在で約40か国80以上の通信事業者が既に5Gサービスを開始しています。
3Gでは世界に先駆けてサービスを開始し、4Gでも大手通信事業者の中では先陣を切ってのサービスを開始するなど、これまでは新しい通信技術によるサービス提供を積極的に行ってきた日本ですが、残念ながら5Gに関しては世界の後塵を拝しています。5Gが世界で始まってから1年以上が経過してからのサービス開始となり、世界の主要国と比較するとかなり遅れています。しかしながら、2020年3月にサービスを開始した後は、通信事業者各社は基地局展開を前倒しで行うなど積極的であり、来年早々には各社10,000局の基地局が設定され、2022年前半には20,000局まで基地局が増える予定となっています。auやソフトバンクでは4Gの周波数を5Gに転用することで5Gのエリアを積極的に拡大し、auに至っては2022年3月までに約50,000局の5G基地局を展開する計画となっています。


5Gはこれまでのように通信速度の改善のみならず、低遅延という特徴を活かした5Gによる遠隔操作や大多数のIoTを利用したサービスなど、従来のスマートフォンによる通信と合わせて様々な活用が期待されています。

