令和元年も間もなく終わろうとしており、来年2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。そして、それに先駆けて今から3か月後の2020年3月には日本でもようやく5Gのサービスが開始されます。
5Gは、今年4月10日に総務省より通信事業者4社に対して利用する周波数が割与えられており、各社ともサービス開始に向けて準備を進めていますが、各社は来年のサービス開始時そしてその後どのような計画で5Gを展開していくのでしょうか。
通信事業者各社は5Gの電波申請の際に5Gの計画を総務省へ提案していますので、その情報を基に各社の今後の計画について纏めてみました。
5Gの周波数割り当て
5Gで利用する周波数は2019年4月10日に総務省が以下のとおり割り当てを行っています。
これまで日本国内では携帯電話用の周波数として700MHz、800MHz、900MHz、2.1GHzなどの周波数が利用されてきましたが、5Gでは見てのとおり3.7GHz帯、28GHz帯と非常に高い周波数が割り当てられていることが特長の一つです。
高い周波数の場合、基地局とデバイス(スマホやIoT機器等)との間に障害物があると電波が遮られてしまい電波の品質が落ちてしまうというデメリットがありますが、一方で周波数が高いことで一度に大量にデータ伝送が可能となる、すなわちデータのスピードが速くなるというメリットがあります。
また、各社に割与えられている周波数の帯域幅が広く、ドコモとKDDIは600MHz、ソフトバンクと楽天モバイルは500MHzとなっていることも5Gの特徴です。参考までに現在スマホ等の3G/4Gで利用されている周波数とその帯域幅は以下のとおりとなっています。
見てのとおり、3G/4Gではいずれの周波数においても帯域幅は最大でも50MHz程度となっており、今回5Gに割与えられた帯域幅が如何に広いかがわかります。
周波数の割り当て方法は、通信事業者4社が5Gの電波を申請する際にあわせて基地局展開計画、エリアカバー計画、想定投資額、サービス提供想定、体制などをあわせて総務省に提示をしており、その情報を基に総務省が、「エリア展開」「設備」「サービス」「その他」の4つの指標で評価を行い、評価の上位の通信事業者から好みの周波数を選択するという方式がとられています。順位結果は以下のとおりです。
通信事業者4社の5G計画は?
各社が総務省に5Gの電波免許を申請する際に申告した計画はどのようになっているのでしょうか。
各社の5Gサービス開始時期
各社のサービス開始時期は、現時点では以下のおとりとなっています。
ドコモ:2020年春
KDDI:2020年3月
ソフトバンク:2020年3月ごろ
楽天モバイル:2020年6月ごろ
一番気になるエリアを見てみましょう。
各社の5Gエリア展開計画
5Gのサービスエリア、カバー率に関しては「メッシュ」という考え方が用いられています。最近でこそ実人口カバー率というものが用いられるようになりましたが、以前は役所がカバーされていればその市区町村はエリアカバーされているとみなされるという形式で人口カバー率が計算されていたこともありました。
5Gでは、日本全国を10km四方のメッシュで区切った4,464のエリアをどの程度カバーしているかによりカバー率を計算しています。
各通信事業者の基地局建設予定数とエリアカバー率は以下のとおりとなっています。
これは5Gの電波申請時の各通信事業者の計画によるものであり、その時点ではどの事業者も2020年度の開始時およびその翌年の2021年度にはそれほど多くの基地局数は予定されていませんでした。ところが、5Gに関しては海外において想定以上に普及が進んでおり、国内でも総務省はもとより東京都も積極的に基地局建設に協力する姿勢を見せるなど、ここ半年で急激に状況が変わってきました。
このような状況の中、例えばドコモは当初は2020年度の段階では各都道府県に1局程度の基地局しか計画されていませんでしたが、現在は2020年3月のサービス開始当初から47都道府県をカバーし、2021年春までに10,000局の基地局を整備する予定に変更されています。また、ソフトバンクについても2024年度末に11,000局としていた予定を2年前倒し2022年度末までに整備を終える予定に変更しています。今後の海外の状況や5Gの利用状況によっては更なる基地局建設の前倒しも期待できそうです。
エリアも同様で、基地局数がそれなりに建設されても5G基盤展開率はそれほど高くなく、2022年度においても50%に満たない状況です。エリアについてはどの事業者もまだ当初計画からの変更を発表していませんが、現在の5Gの注目度や昨今のローカル5Gへの関心などを考慮すると各通信事業者ともある程度はカバー率を早い段階上げてくるのではないかと想定されます。
5G活用の具体例
5Gサービス後、通信事業者各社は具体的に以下のような利用を想定しています。
(参考:第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設計画の認定に係る審査結果)
ドコモ
- 2019年9月より、都市部主要駅、空港、スタジアム等における5G端末提供
- 超高速通信、超低遅延通信、他接続同時接続通信を活用しラグビーワールドカップ2019にてプレサービス
- 医療格差の解消、防災・減災、人手不足の解消など地域課題解決・地方創生に向けた取組の推進
- パートナーと協業し、観戦支援、運営支援、観光支援及びインバウンドの観点で2020東京オリンピック・パラリンピック大会に向けたサービス提供を検討
- 超高速通信、超低遅延通信、多数同時接続通信を活用した新体感ライブ、eスポーツ等のサービスをコンシューマ向けに提供
KDDI
- 農林水産業、交通・物流、エネルギー、建築・土木、エンタメ等の14分野に対して5Gの利活用サービスを提供
- 2020年度から超高速通信を活用した高精細映像配信サービス
- 2020年度から超低遅延通信を活用した「観光地とのVRコミュニケーション」等のリアルタイム性を必要とするサービス開始
- 2022年度以降に超低遅延通信及び多数同時接続通信を活用し、「無人自動車の遠隔操作支援サービス」、「建設機械の遠隔操作支援サービス」等のサービスを開始
ソフトバンク
- 2019年夏以降に360度VR体験サービス等のプレサービスを開始
- 2019年度から超高速通信サービスを開始し、8K映像視聴サービスやVR/AR/MRサービス提供を想定
- 2021年度から超低遅延通信サービスを開始し、建機や農業ロボット等の遠隔操作を想定
楽天モバイル
- 2020年6月までに超高速通信サービスを開始し、VR/AR、多視点映像、高臨場感映像等のサービス提供を想定
- 2021年6月までにSAを導入し、MECやネットワークスライシングを使ったサービスや超低遅延、多数同時接続サービスを提供(ドローン飛行、自動運転、スマートハウス等)
- 農林水産業、建設・土木、工場、製造、オフィス等の産業分野の企業・団体と連携
- 地方創生の実現、ICTインフラ地域展開戦略に公表された社会的課題に対する取組、潜在的な需要の発掘
各社とも5Gの特徴を活かした例を挙げていますが、実際にどのように活用されていくのかに関しては、先行する諸外国の動向を見ながら活用方法を検討していくということになるのでしょう。
いよいよ日本でも始まる5G!
2020年3月の5G開始までいよいよあと3ヵ月となりました。5Gは通信業界のみならず多数の業界が注目している技術であることから、予定通り来年3月にはサービスが開始されると共に、その後も積極的な投資やサービス提供を行い早々に海外諸国に追い付くことが期待されています。