ここ数年一気に普及してきたIoTですが、そのIoTデバイスとの通信技術は多数あります。
その通信技術の一つである「Sigfox」とは一体どういうものなのか。
この記事では、「Sigfox」の特徴やエリア、そして具体的な活用事例について紹介をしています。
SigfoxはフランスのSifgox社が開発したLPWAテクノロジー
Sigfoxは、フランスのSigfox社が開発したIoT向けの通信技術であり、LoRa、LTE-M、NB-IoTなどと同じようにLPWAの一つです。Sigfox通信事業者は、セルラー同様に基地局等のインフラを整備する必要がありますが、面白いのは、Sigfoxサービスを提供できる通信事業者は一つの国に1社だけという制約を設けていることです。
日本では、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)がSigfoxの提供を行っており、KCCSが日本で唯一のSigfox提供通信事業者になります。
参考;LPWAとは
LPWAの比較 - 上り/下りともに低速のSigfox –
Sigfoxを含めたLPWAには以下のようにそれぞれ特徴があります。 Sigfoxは、日本国内ではLoRaと同様に免許不要の920MHz帯域の周波数を利用してサービスを行っており、通信速度を抑え一つの基地局で数十kmまでカバーできるという特徴があります。
Sigfox利用可能エリアは国内・海外ともに急速に広がっている
Sigfox社は2009年に設立された新しい会社ですが、世界では急速にSigfoxサービスエリアが拡大しています。例えば、日本ではKCCSが2017年にサービスを開始しましたが、サービス開始1年後には人口カバー率50%までエリアを拡大し、2019年現在では人口カバー率は95%以上となっています。わずか2年でここまでエリアを広げているということは本当に凄いですよね。
世界に目を向けてみると、世界でもSigfoxのサービスエリアが広がっています。
こちらは2019年現在で60か国以上でサービスを開始しており、そのエリアも今後ますます拡大していく見込みです。
Sigfoxの特徴
Sigfoxでは、デバイスパートナーがチップ、モジュールなどのIoTデバイスを、KCCSがSigfoxネットワークを、アプリケーションパートナーがアプリやプラットフォームを提供する体系になっています。
Sigfoxの技術的な特徴として以下の4つが挙げられます
狭帯域でわずか200KHz
Sigfoxは200KHzという非常に狭い帯域幅で運用可能であり、1つが100Hz幅という非常に帯域幅の狭いチャネルを多数もち、100~600bpsという速度でメッセージ送信をします。従って、比較的長距離まで電波が届き、かつノイズに強いとされています。
軽量プロトコルで省電力化
Sigfoxは非常に軽いプロトコルで小さなメッセージでやり取りを行う為、消費電力を大幅に抑えることが可能であり、それによってIoTデバイスのバッテリーの寿命を大きく伸ばすことが可能です。
データサイズは20バイト前後
Sigfoxでは、上りは最大で12バイトのメッセージを2秒間かけて送信します。12バイトの場合、ヘッダー等を含めてもわずか26バイトという非常に小さなデータとして送信することができます。下りは最大8バイトのメッセージを送ることができます。
スター型ネットワークで複数の基地局を利用してデータを送信
Sigfoxのネットワークは以下のように構成されています。デバイスはセルラーのようにどこかの基地局にアタッチするのではなく、メッセージを送信する際には複数の基地局に向けてブロードキャストをする仕組みになっています。メッセージを受信する基地局は平均で3局程度とされています。また、メッセージを送る際には、必ず送信を三回繰り返し、かつそれぞれで送信する周波数を変えています。
各基地局で受診したメッセージは一か所のクラウドに集約され、そこで1つのメッセージに集約し契約者のITセンターへ送付する仕組みになっています。
デバイスへのメッセージ送信は、デバイスからの要求に基づいて行われます。つまり、メッセージの受信はデバイスが好きなタイミグで行うことができるという特徴があります。契約者のITセンターがデバイスから受信要求メッセージを受けると、ITセンターからメッセージが送られ、特定の基地局からデバイスにメッセージが届けられます。
Sigfoxには通信制限回数があり、最大で1日140メッセージまでとなっています。
Sigfoxのユースケース
Sigfoxを利用したユースケースは、LoRaやLTE-Mなど他のLPWAと同様に既に多数のユースケースがあります。
水道メーターの検針

水道メーターの利用状況の確認は、これまでは人手を介して一軒ずつ訪問して目視で確認をしていましたが、Sigfoxが搭載された水道メーターを利用することで必要なデータをセンターに自動で送付することが可能となり、人手による訪問が不要となります。送信するデータは非常に小さい為、例えば、1日に2回水道の利用データを送信する場合でも消費電力をかなり抑えることが可能となり、バッテリーの交換は数年間行う必要はありません。また、データを直接クラウドに送付することで、データのグラフ化や分析などを行いやすく、これまで以上に詳細管理を行いやすくなります。
農業での活用

農業はIoTを活用しやすい分野であり、Sigfoxでもたくさんの農業におけるユースケースが考え出されています。
例えば、ビニールハウス内の温度、湿度はもちろんCO2の量や土壌の情報など、多数の情報を収集し、Sigfoxを利用してクラウドへ集約し、その分析結果を手元で表示させることが可能です。これの作業はこれまでは全て人手を介して行われていたため、計測の度に現地へ移動して測定を行う必要がありましたが、Sigfoxを利用することで業務の効率化を図ることが可能となります。
防災利用

河川や池の水位や雨量のモニタリングにもSigfoxが利用されているケースがあります。水位や雨量監視システムで収集したデータをSigfox経由でクラウドへ送付し、水位や雨量が閾値を超えた場合に警報を鳴らすことができます。危険個所は国内だけでも数十万か所あり、それら一つ一つに監視システムを導入し運用するためにはコストがかかりますが、Sigfoxの安価なランニングコストと省電力という特徴によりコストを大幅に抑えることができます。
今後の展望
Sigfoxは2017年から始まった新しいテクノロジーですが、2019年の今年は人口カバー率も95%を超え、いよいよ本格的に普及するフェーズに入ってきていると考えれます。Sigfoxはモビリティをサポートしていないので移動する物への対応は難しいが、安価なランニングコストと省電力という特徴を活かし、先の農業、防災、各種メータでの利用を始め、物流管理、駐車場管理、防犯など次々と用途が広がっていくことが想定される。