最近「海外へいくならxxxのWi-Fi」というCMをよく耳にし、海外渡航者の大多数は海外で利用可能なWi-Fiルータをレンタルし、現地での通信手段を確保しています。
Wi-Fiルータは便利であり、このWi-Fiルータの存在により海外旅行がかなり便利になりましたが、一方でその料金があまり安くないことが課題となっています。
この記事では、海外渡航時に少しでもお得に現地での通信手段を確保するか、すなわち海外で利用できるSIMカードの利用方法について解説をしています。
なぜ今、海外SIMカードが注目されるのか?
SIMカードは相当前から存在していましたが、なぜ今SIMカードが注目されるようになったのでしょうか?
これまで通信事業者は自社で発売した端末においては自社のSIMカードしか動作しないように「SIMロック」と呼ばれる規制をかけていました。例えば、ドコモが発売したスマホ端末にはドコモが発行したSIMカードしか動作せず、仮にauやその他の格安SIM事業者のSIMをドコモの端末に入れても動作しません。
このように通信事業者が販売するスマホ端末にはSIMロックがかけられるという状況が長い間続いていましたが、数年前からドコモ、au、ソフトバンクの3社は特定条件の下でSIMロックを解除するサービスを提供し始めました。
また、最近では総務省が進める「端末分離プラン」構想により、通信事業者が端末を販売する際にはサービスプランと切り離して販売するよう省令改正が行われたこともあり、端末とSIMカードの一体販売は薄れ、今後はまずます端末とSIMを別々に購入するという環境が広がっていくでしょう。
そもそもSIMカードが導入された大きな理由の一つはユーザが端末を自由に選択できるようにするためであり、この考え方は海外では当たり前となっているので、日本もようやく通常のSIMカードの使い方ができる環境が整ったといえるでしょう。
海外でSIMカードを使う理由とは
端末とSIMカードを別々に購入して利用することができるようになることで様々なメリットがありますが、その中でも大きなメリットの一つは海外でのSIMカードの利用です。昨今、海外旅行や海外出張の際には海外で利用できるWi-Fiルータをレンタルして現地での通信手段を確保するユーザが増えており、このWi-Fiルータの出現により海外渡航が非常に便利になりました。ただし、難点としては料金がそれほど安くないことです。
Wi-Fiルータ事業者によって料金は異なりますが、たとえばイタリアで利用するためにWi-Fiルータをレンタルすると料金は以下のようになります。
1日だけの利用であれば大した料金ではありませんが、ヨーロッパとなると渡航期間が1週間以上となることからレンタル料の総額も高額となってしまいます。
このような料金の課題を解決する一つの手段として現地の海外SIMカードを利用するという方法があります。海外では渡航者用にプリペイド用のSIMカードというものが用意されており、誰でも簡単にプリペイドSIMを購入することができます。プリペイド用のSIMカードとは一定期間限定で利用できるSIMカードのことであり、例えばイタリアでは1GBの通信量で30日間の有効期限があるSIMカードが1,000円以下で販売されています。スマホでのインターネット利用程度であれば1GBの容量でもかなりの日数利用可能であり、滞在期間全体での総額を比較するとかなりおトクになります。
この例でWi-Fiルータを利用した場合と現地のSIMカードを利用した場合とで料金を比較してみます。
仮に1週間(7日間)の滞在で3GBのデータを利用したとすると以下のとおりとなります。
見てのとおり、Wi-Fiルータを利用した場合は現地SIMを利用した場合と比較して6,000円以上高くなってしまします。大きな要因の一つは、Wi-Fiルータのレンタル料金の大半が1日単位での課金となっているからです。仮に1日あたりのデータ利用量が少ない日があったとしても1日当たり定額で課金されてしまい、これが無駄の原因となっています。特に海外渡航の場合は移動距離が長いことが多く、この移動時間もレンタル料に含まれてしまうと更に割高になります。
海外渡航において現地通信事業者のSIMカードを利用することが如何に有益であることは理解できたかと思います。では、海外SIMを利用するための手順や注意点について一つずつ解説をしていきます。
SIMカードにはいくつかの種類がある
SIMカードは、標準SIM、Micro SIM、Nano SIM、eSIMの4種類があります。標準SIM、Micro SIM、Nano SIMはプラスチック製のカードでできており、以下のようにサイズが異なります。
SIMカードが登場した当時は標準SIMが利用されていましたが、その後は小型化が進みMicro SIMとなり、今ではNano SIMが主流となっています。SIMカードのサイズは端末(スマホやガラケー等)に依存します。各端末で利用できるSIMカードの種類は端末の説明書やホームページに記載されているので、利用している端末がどのSIMカードに対応しているのか事前に必ず確認しましょう。
一方、eSIMと呼ばれるSIMはembedded SIMの略であり上記3点とはことなり物理的なSIMカードではなくソフトウェアで制御されたSIMカードになります。eSIMの利用においては、端末がeSIMをサポートしているかどうかに依存します。通常、ユーザは利用する通信事業者を変更する場合にはSIMカードを入れ替える必要がありますが、eSIMの場合は物理的なカードが無いので入れ替える必要がありません。eSIMの場合、必要な情報をソフトウェアで更新することで切り替えることが可能となります。iPhoneもiPhoneXS以降ではeSIMをサポートしています。
海外SIMカードを利用するために必要なスマホ端末
SIMフリー端末の準備
海外SIMカードでスマホを利用する際には、当然ながらスマホ端末が必要となり、利用するスマホはどの通信事業者のSIMカードでも受け入れられるSIMフリーのスマホである必要があります。国内で普段利用しているスマホを利用することも可能ですが、先ほど説明したとおり国内の通信事業者はSIMロックと呼ばれる制限をかけている可能性があるため、海外SIMカードを利用する際には事前にSIMロックの解除が必要となります。
各通信事業者ではSIMロック解除サービスを受け付けていますが、制約があるので注意が必要です。
ドコモ
2015年5月以降に購入した端末で購入日から100日経過した機種(ただし、端末料金の残債が無い場合には100日を待つ必要なし)
au
2015年4月23日以降に購入した端末で購入日から100日経過した機種(ただし、端末料金の残債が無い場合には100日を待つ必要なし)
ソフトバンク
2015年5月以降に購入した端末で購入日から100日経過した機種(ただし、端末料金の残債が無い場合には100日を待つ必要なし)

現地通信事業者に対応した端末

海外SIMカードを利用する際にもう一つ重要なこととして、利用する端末が現地通信事業者の周波数に対応している必要があるということです。
周波数というのは、例えばラジオではTBSラジオ=954KHz、文化放送=1134KHzというように電波のチャンネル(周波数)が決められており、受信者はその番組に利用されているチャンネル(周波数)にチューナーを合わせることで受信が可能となります。同じようにスマホの通信でも電波の周波数が決まっており、使える周波数は通信事業者によって異なります。
対応する周波数はバンドクラス(Band)で表記され、周波数に合わせてバンドクラスが決まっています。
例えば、国内の通信事業者が対応している周波数(Band)は以下のとおりとなっています。
このように、ドコモのSIMカードを利用する際には、このドコモが保有している周波数に対応したスマホ端末を利用する必要があります。これまでは通信事業者が端末とSIMカードをセットにして販売していた為、ユーザは何も気にせず端末を利用していましたが、SIMカード単体で購入する場合には、このように端末側の周波数サポートも気にする必要があります。
端末がどの周波数をサポートしているかという情報は端末の取り扱い説明書もしくはホームページに記載されています。また、現地の通信事業者がどの周波数に対応しているかという情報は、通信事業者のホームページもしくはSIMカードを販売しているWebサイトでも確認できます。
ただし、最近のスマホは世界の主要国で利用されている周波数はほとんどサポートされている為、この周波数についてはそれほど神経質になる必要はないかと思いますが、現地まで行って利用できないということにならないように念のために事前に確認しておくことをお勧めします。
海外SIMカードの入手方法
海外SIMカードの入手方法は大きく二つあります。
一つは、現地で購入する方法、そしてもう一つは事前にWebサイトで購入する方法です。
現地でSIMカードを購入する場合、現地の空港、キオスク、コンビニエンスストア、通信事業者のショップ等でSIMカードを購入することができます。購入する際には、SIMカードのサイズ、利用可能データ量、音声通信有無、有効期間を確認し購入する必要があります。
現地で購入するメリットとしては、購入後のSIMカードの設定をサポートしてもらえることです。海外SIMカードは、購入した後にアクティベーションと呼ばれる手順が必要となり、通信事業者によってはこのアクティベーション手順が難しい場合があるため、アクティベーションのサポートを受けることができるということは大きなメリットの一つといえます。
事前にWebサイトで購入する場合は、渡航先の国に対応したSIMカードをamazon等のインターネットで事前に購入することができます。以前はSIMカードは国ごとに準備されることが多かったのですが、最近では対象の国だけではなくその周辺国でも利用可能なSIMカードも発売されており非常に便利になっています。例えば、「Threeデータ通信プリペイドSIM」ではイギリスを含む42か国で利用可能なSIMカードであり、ヨーロッパで複数国を訪れる旅行を計画しているユーザにとっては非常に便利なSIMカードです。
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海外へ行くなら海外SIMカードを!ただし注意も必要
以上のように海外SIMカードを利用することで、Wi-Fiルータをレンタルするよりも海外渡航先でおトクに通信手段を確保することができます。最近ではWebサイトでかなりの種類のSIMカードが用意されており、ほとんどの渡航先のSIMカードが販売されている為、入手も非常に簡単になっています。また、一つのSIMカードを複数国で利用できるというメリットも大きいですね。
一方で、海外SIMカードを利用するためには事前にSIMフリー端末を準備したり、SIMカードのアクティベーションなどの作業が必要であったりと多少の面倒があります。また、海外SIMカード利用時には日本国内で利用している電話番号が利用できないという制限(※)もありますので、海外SIMカードを購入する際には事前に確認をしてから購入することをお勧めします。
海外SIMカードの利用は多少のハードルもありますが、一度海外SIMカードを利用して慣れてしまえば、これ以上便利なものは無いと感じるのではないでしょうか。
※2枚のSIMカード収容可能で両方のSIMで待ち受け可能なDSDS対応スマホであれば日本国内で利用している電話番号も使えます。