最近はかなり広まってきた格安スマホですが、格安スマホとはどういうものなのか。そして、何故ドコモ、au、ソフトバンクといった通信事業者よりも料金が安いのか。
この記事では、格安スマホの仕組みを説明するのと共に格安スマホへ移行する際の注意事項をわかりやすく説明しています。
格安スマホとは何なのか?どういう仕組みになっているのか?
格安スマホがどういうものであるかを知るためには、まずケータイ電話サービスを提供している事業者の種別について理解しておく必要があります。ケータイ電話サービスを提供している事業者には、MNO(Mobile Network Operator)とMVNO(Mobile Virtual Network Operator)の2種類があり、MNOはドコモ、au、ソフトバンクのことを示し、MVNOは楽天モバイル、LINEモバイル、OCNモバイルなど格安スマホ事業者を示します。このように、格安スマホの事業者とは一般的にはMVNOと呼ばれているのです。
MNOとMVNOの2社の違いは、自社でケータイ電話サービスを提供する設備を持っているか持っていないかの違いです。ドコモ、au、ソフトバンクなどのMNOは自社で基地局やコアネットワークと呼ばれるインフラ設備をすべて自前で整備しています。一方、楽天モバイル、LINEモバイルなどのMVNOは、自社でネットワークを持っておらず、ドコモ、au、ソフトバンクのMNOから設備を借りてサービスを提供しています。
格安スマホが何故ドコモやauなどの通信通信事業者よりも安いのか?

ケータイ電話サービスを提供するためにはインフラ設備が必要であり、ドコモ、auソフトバンクは毎年多額の設備投資を行ってケータイ電話サービスを行う為のインフラを整備しています。また、スマホは今や社会インフラとして認識され非常に重要なサービスであることからユーザへのサポートも重要であり、その為ドコモ、auソフトバンクは全国に多数のケータイショップを構え、新規・機種変更・解約の受付や相談窓口を設けています。このようにケータイ電話サービスを提供するためには多額の投資が必要であり、ドコモ、auソフトバンクはこの投資を回収できる範囲で料金設定をおこなっています。
一方、格安スマホ事業者は自前での設備投資はほとんどなく、ほぼ全てをドコモ、auソフトバンクのいずれから借用しています。この設備の借用の際にはある程度まとまった容量の設備を一括で借用することで借用費用を安くすることができます。また、ドコモ、auソフトバンクとは異なり自社でケータイショップを設けず、新規や解約の受付は量販店やwebサイトで行うことでコストを下げています。このように格安スマホ事業者はドコモ、auソフトバンクと比較して投資額を下げることでよりも安い金額でサービスを提供することが可能となっており、これが格安スマホを安く提供できる理由なのです。
格安スマホを利用する際に認識すべき二つのデメリット
2018年12月時点でユーザ数が3万人以上いる格安スマホ事業者は52社あり、格安スマホユーザは1,244万契約でスマホ・ケータイの全契約数の約8%を占めています。これだけ格安スマホが広まってきている割には想定より少ない印象ではないでしょうか。
格安スマホ事業者は、ドコモなどの通信事業者から設備を借りているので設備の品質もドコモ等と同等の品質が保たれていると考えれます。その上で、ドコモ等よりも毎月の利用料が安いのであれば、これほど良いサービスはないと思われますが、何故すべてのユーザが格安スマホに移行しないのでしょうか?
格安スマホユーザが大きく伸びない理由は二つあります。
一つは、新規申し込みの障壁が高いためです。先ほど説明したとおり格安スマホ事業者は自社の専用ショップを持っておらず新規で申し込みをする際には量販店かWebで行う必要があります。従って、事前に自分である程度格安スマホの取り扱い店舗やサービス内容を調べてから量販店やWebで申し込みをしなければなりません。一方、ドコモなどのMNOは全国に3社合計7,000店舗以上のケータイショップを持ち専任の担当者による詳細説明を受けることができますので、新規申し込みを行う際にはとりあえずショップに行ってしまえばすべてが解決します。このように新規申込時のわずらわしさがユーザの移行の障壁となっています。
もう一つは、格安スマホの場合、時間帯によって通信速度が大幅に落ちる可能性があるということです。特に多数のユーザが一斉に利用する時間帯、例えば平日の通勤時間帯の7時~9時、会社の昼休み時間帯の12時~13時、帰宅時間帯の17時~19時は通信速度が一気に落ちることがあります。
これらの時間帯は格安スマホだけではなく、ドコモなどの事業者でも同様に集中してユーザが一斉に利用していますが、何故格安スマホだけが速度が落ちるのでしょうか?
それは、格安スマホが借用しているインフラ設備の容量が十分ではないからです。ドコモなどの通信事業者はユーザの需要予測をあらかじめ計算し、最大の通信量に合わせて設備を準備しています。一方で格安スマホの場合は、最大の通信量に合わせるのではなく、通常利用時の通信量に合わせて設備を用意することでコストを下げていますので、通常利用量を大幅に超えてしまうと設備の容量が足りなくなってしまいます。
これを車と道路の関係を例に説明します。
ドコモなどの通信事業者は、道路を走る自動車の最大数に合わせて道路を整備しているので常に渋滞が無い状態で車を走らせることができます。一方で格安スマホの場合は、平常時の自動車の数に合わせて道路を準備しているため、自動車が一気に増えてしまうと道路の車線が十分ではなく渋滞をしてしまいます。これと同じことが通信でも発生し、格安スマホは通信速度が遅くなってしまいます。

このように格安スマホは毎月の基本料は安いもののいくつかデメリットもあるため、移行する際にはこれらデメリットも十分考慮して移行する必要があります。
全てのスマホ端末が格安スマホで利用できるわけではない
格安スマホに移行する際に注意しなければならないこととして、端末の選択があります。スマホ端末であれば何でも格安スマホに使えるというわけではなく、いくつか制約があり、全ての端末がその格安スマホ事業者で使えるとは限りません。
注意すべきことは二つです。
一つは、スマホ端末によってはSIMロックというロックがかかっており、格安スマホ事業者のSIMを入れても動作しない場合があります。SIMロックとは、ドコモ、au、ソフトバンクが行っている施策で、例えばドコモのスマホ端末はドコモのSIM以外動作しないように端末にロックをかけてあり、このドコモの端末にau、ソフトバンク、楽天モバイルなどのSIMを指しても動作しません。ドコモのスマホ端末を他の事業者で使う為には事前にドコモでSIMロック解除の手続きが必要であり、このSIMロック解除を行えばそれ以降はどの事業者のSIMカードでも動作します。最近では、格安スマホ事業者が増えてきたこともあり、SIMフリーと呼ばれるどのSIMでも動作するスマホ端末が量販店やamazonなどのWebサイトで売られており、格安スマホを利用する際にはこれらのSIMフリー端末を購入するということも一つ手段となります。
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先ほど説明したとおり格安スマホ事業者はドコモなどの通信事業者から設備を借りてサービスを提供しているので、その通信事業者が利用している周波数にあった端末を選択する必要があります。周波数というのは、例えばラジオではTBSラジオ=954KHz、文化放送=1134KHzというように電波のチャンネル(周波数)が決められており、受信者はその番組に利用されているチャンネル(周波数)にチューナーを合わせることで受信が可能となります。同じようにスマホの通信でも電波の周波数が決まっており、使える周波数は通信事業者によって異なります。
対応する周波数はバンドクラス(Band)で表記され、周波数に合わせてバンドクラスが決まっています。各通信事業者の対応するバンドクラス(Band)は以下のとおりです。格安スマホを利用する際には、その格安スマホ事業者はどの通信事業者のインフラ設備を利用しているのかを確認し、その上で以下の表に記載されているバンドクラス(Band)に対応したスマホを購入する必要があります。

メリット、デメリットをしっかり把握してから格安スマホへ

以上のとおり格安スマホは毎月の通信料金は安いものの、専用ショップがほとんどなく新規申込が多少面倒であり、またスマホ端末購入時にも対応周波数を意識して購入するなど、ドコモなどの通信事業者よりも導入障壁が高くなっています。また、時間帯によっては通信速度が大幅に遅くなることがあり、スマホを利用したい時に思うように利用できない可能性もあります。
このように格安スマホにはメリットもあればデメリットもあるため、格安スマホへ移行する際にはこれらをしっかり理解し、日頃スマホを利用するうえで影響がないことを確認したうえで移行することが大切です。