ドコモ、KDDI、ソフトバンクの通信事業者大手3社は、武田総務大臣が3社に対して行った値下げ圧力により、大手3社のメインブランドおよびサブブランドのUQモバイル、ワイモバイルの料金が大幅に値下げしました。

また、この3社の料金値下げ施策を受け、これまで2,980円の最安値でデータ利用無制限を提供してきた楽天モバイルもデータ利用無制限の料金は据え置いたものの、データ消費が少ないユーザに対して更に安い料金体系に変更をしてきました。
このように大手通信事業者が料金値下げを行う中、これまで「安い料金」を売り文句にサービスを提供してきた格安スマホ事業者(MVNO)は、どのようになるのでしょうか。
この記事では、2021年3月27日現在の格安スマホ事業者22社の料金を比較し現時点で一番オトクな格安スマホ事業者を紹介するとともに今後格安スマホ事業者がどのようになっていくのかについてわかりやすく解説しています。

ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの新料金プラン
まず初めに、ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの大手4社の新料金プランがどのように変わったのかを見てみましょう。
楽天モバイル以外の3社には、7GBまで料金が段階的に上がっていく小容量データプランと50GB以上や使い放題などの大容量プランの大きく2種類のプランがあります。
各社の料金比較は以下のとおりです。
これまでも楽天モバイルが一番安い料金プランを提供していましたが、今回の料金プラン変更では1GB未満の利用は無料、3GBまでは980円、20GBまでは1,980円と大幅に値下げをしてきました。1GB未満が無料という施策の狙いは二つあり、一つは新規の加入障壁を下げる為、もう一つは既存無料キャンペーン適用ユーザを維持する為です。
楽天モバイルは、楽天LINKというアプリを使うことで通話料が利用時間に関係なく無料となります。従って、データ利用量が1GB未満のユーザは、基本料もデータ利用料金も支払うことなく楽天LINKの無料電話が使えます。つまり、毎月無料で電話がかけ放題になるのです。このサービスにより新規ユーザ獲得を加速させ、かつ既存ユーザは1年間の無料キャンペーン後もデータ通信を1GBに抑えることで継続して無料で使える為、解約率を下げることができるのです。

ドコモ、au、ソフトバンクは、新たに20GBのプランを提供し始めます。各社の料金比較は以下のとおりで、楽天モバイルを除くと料金は20GB 2,480~2,980円となります。

大容量プランに関しては、各社データ通信利用量無制限プランを提供すます。楽天モバイルは以前同様に2,980円ですが、ドコモ、au、ソフトバンクは6,600円前後となっています。


大手4社に対抗しIIJmioとBic SIMが最安値プランを提供
ドコモ、au、ソフトバンクが20GBで2,480~2,980円、データ利用量無制限で6,600円前後で提供する中、各格安スマホ事業者はどのような対抗策を打ち出しているのでしょうか。
以下に格安スマホ事業者22社の料金を比較しまとめてみました。各事業者は複数の料金プランを提供していますが、以下の比較では「音声通話+データ通信」プラン(音声付プラン)で比較しています。音声通話に関しては、事業者によって20円/30秒や毎月70分まで無料など多少の差はありますが、今回は音声プランの内容記載は省略しています。
データ容量については、1GB未満から30GBまでの小中容量データプランの料金を比較しています。格安スマホ事業者の中には、データ利用量ごとの料金プランの他に通信速度を抑えた定額プランや30GB以上の大容量プランを提供している事業者もありますが、今回はそれらを比較に含めていません。
比較表では、格安スマホ事業者がどの通信事業者の回線を利用しているかについても記載しているので、乗り換えを検討しているユーザは参考にしてみてください。
では、早速比較してみましょう。
オレンジ色の箇所がそのデータ容量の最安値プランとなります。ドコモ、au、ソフトバンクの値下げ策を受けて、これまではmineoの料金体系が一番安かったのですが、2月末から3月初旬に格安スマホ事業者各社が順次に新料金プランを発表し、3月の1週目時点では超低容量はLinksMate、低容量はNuroモバイル、中容量はexciteモバイル、IIJmioが最安値となりました。これまでは、格安スマホ事業者の料金水準は3GBで1,500円程度でしたが、Nuroモバイルは3GBで半額以下の720円となり、かなり値下げされてることがわかります。また20GBから30GBの中容量では、LIBMOがそれぞれ1,810円、2,480円と最安値プランを発表しています。
こちらの表では、最上段に大手通信事業者の料金水準と格安スマホ事業者の料金相場を記載しています。
大手通信事業者の料金水準は、3GB 1,500円、15GB 2,000円、20GB 2,500円、25GB 3,500円となっています。一方、格安スマホ事業者の料金水準は、5GB 1,500円、10GB 1,800円、20GB 2,000円です。格安スマホ事業者は大手通信事業者の料金プランよりも利用可能なデータ量を増やし、それでいて価格を下げていることがわかります。

多くの格安スマホ事業者はかなり厳しい状況
先ほどの表では、大手通信事業者に対抗する新料金プランを発表した事業者、発表予定の事業者、発表予定がない事業者の3つに分けて表記していますが、見てのとおり、対抗策としての新料金プランの発表を予定していない格安スマホ事業者はまだ4社もあります。これらの格安スマホ事業者の料金を見ると、5GB以上のプランではほとんどが大手通信事業者よりも割高になっています。
一方で、既に新料金プランを発表しているHISモバイルは、20GBプランこそ大手通信事業者に対抗する料金体系となっていますが、それ以外のデータ量に関しては5GBより大きなデータ量で割高になっています。また、y.uモバイルも新料金プランを発表していますが、20GBプランが割高となっています。
格安スマホ事業者は大手通信事業者から通信インフラを借用してサービスを行っており、借用する際には接続料を大手通信事業者に支払わなければなりません。格安スマホ事業者は、この接続料と自社の設備費、営業費などのコストを全て足し、それに利益を乗せて販売しているのですが、接続料が高いと到底大手通信事業者には太刀打ちできません。現時点で大手通信事業者に対抗して料金値下げを行っていない事業者がまだ結構あることを考えると、接続料が高く大幅な値下げができないのではないかと考えられます。
昨年から本格的に始まった総務大臣による携帯電話料金の値下げにより、今年は格安スマホ事業者が淘汰されていくでしょう。