2020年も残りわずかとなりましたが、12月に入って携帯電話事業者が立て続けに料金値下げを発表してきました。現時点ではドコモとソフトバンクが新しい料金プランを発表していますが、年明けにはauも発表することになっています。
一見似たようなドコモとソフトバンクの新しい料金プランにはどのような差があるのでしょうか?また、新しい料金プランでは、どのプランが一番オトクなのでしょうか?そして、まだ新料金を発表していないauはどのようなプランを考えているのでしょうか?この記事では、これらについてわかりやすく解説をしています。
料金値下げの経緯
日本の携帯電話料金に関しては、前安倍政権の時より世界と比較して高く4割削減可能と言われ、菅政権に移行してからはその主張は強くなりました。これを受け2020年11月にKDDIとソフトバンクは、それぞれのサブブランドであるUQモバイルとワイモバイルでデータ量20GBの安いプランをつくり、UQモバイルは20GBで3,980円、ワイモバイルは5分以内の通話料無料をセットにして20GBで4,480円で提供することを発表しました。
ところが、この発表に対して総務大臣は納得をせず、ドコモ、au、ソフトバンクといったメインブランドでの値下げを強く要望してきたのです。20GBのデータ容量で安い料金プランを提供することが売り上げに大きな影響を及ぼすことが容易に想像できたドコモ、au、ソフトバンクの3社はしばらくは沈黙状態でしたが、12月3日、ついにドコモが新しい20GBのプランを発表しました。そしてさらにドコモは大容量プランについての値下げも12月18日に発表したのです。
この発表を受けて大きく慌てた事業者がソフトバンクでした。というのも、ソフトバンクは11月に発表したワイモバイルでの20GB 4,480円のプランを12月下旬から開始するとしていたのですが、ドコモの20GBプランはメインブランドによるプランということだけではなく、ワイモバイルのプランよりもさらに安かったからです。しかし、そこはさすが小回りの利くソフトバンク。ドコモが20GBプランを発表した12月3日から20日も経たずに12月22日に対抗プランを発表しました。
この2社に大きく置いて行かれてしまったのはauです。auもソフトバンク同様にサブブランドのUQモバイルで20GBプランを提供すると発表していましたが、その開始時期を2021年の2月以降としていたため、新しい料金プランを考案する時間はありました。ところが、大誤算があったのです。それはauが当初より予定していた12月9日のau新サービス発表会でおきました。
auの新サービス発表会はドコモの20GBプランが発表された1週間後に開催された為、当然ユーザはドコモに対抗する値下げプランを期待していました。しかし、新サービス発表会で報告された内容は、新たにAmazon primeをパッケージしたプランやDAZNをパッケージしたプランなどのデータ利用量無制限の大容量プランであり、ユーザが期待したものではなかったのです。しかも、その新しいサービスの月額料金の表記は、家族割など様々な割引サービスを最大限に適用した最安料金であたかもすごく安いサービスのように見せかけていたのですが、実際の月額料金とは大きくかけ離れていたことでユーザから大きな反感をかってしまったのです。
更にこの約2週間後にソフトバンクがドコモ対抗プランをしっかりと準備してきたことで、auは窮地に立たされています。auは新サービス発表会の反感を受け、20201年の年明けには新料金を報告すると発表しています。
ドコモ、ソフトバンクから発表された20GBの新料金プラン内容の比較
ドコモは「ahamo」という名称で、ソフトバンクは「Softbank on LINE」という名称でそれぞれ20GBで2,980円のプランを発表しましたが、どのような違いがあるのでしょうか。
これら二つを比較してみました。

両社ともほぼ同じ内容になっていますが、現時点で判明している大きな違いは4点です。
1点目は、Softbank on LINEではLINEがカウントフリーになっています。つまり、LINEを利用した際に消費したデータ量は20GBにカウントされず無料で利用可能となります。LINEのアクティブユーザ数は8,600万件と言われており、国内のスマホユーザの大多数が利用しているLINEが無料で利用できるというメリットは大きいですね。
2点目は、ahamoは82ヵ国で追加料金なくデータローミングが可能という点です。対象となる82ヵ国にローミングした際に消費したデータは20GBの範囲内でカウントされるようになります。この82ヵ国にはフランス、イギリス、ドイツ、スペインなどのヨーロッパ諸国、アメリカ、カナダの北米、中国、韓国、香港、インドなどのアジアなど日本人の渡航先として人気のある国はほぼ含まれています。新型コロナウィルスで海外旅行はしばらく難しい状況ですが、ahamoがあれば海外旅行するたびにWi-Fiルータをレンタルする費用が不要となるのでかなりオトクになります。
3点目は、オンラインでの申し込み方法です。ahamoもSoftbank on LINEもオンラインのみの受付となっていますが、Softbank on LINEでは、LINEを利用した申し込みも可能となります。オンラインのみの申し込みの場合、通常は専用Webページにアクセスして必要情報を入力したり、専用アプリをダウンロードして必要情報を入力したりなど、手順が少し複雑になりますが、日頃利用しているLINEを利用して申し込みができるとなると、パソコンやスマホがそれほど得意ではないユーザでも簡単に申込が可能となり、かなりのメリットになります。
4点目は、eSIMです。Softbank on LINEは、通常のプラスチックの物理SIMだけでなくソフトウェアで制御可能なeSIMにも対応するようです。eSIMの利点は何といっても即座に切り替えができることです。eSIMはソフトウェアで書き換えるSIMなので、通信事業者から新しくSIMが送付されてくるのを待つ必要なく即座に申し込みと回線切り替えができるというメリットがあります。

ahamoとSoftbank on LINEには、このように4つの違いはありますので、その違いを見ながら選択するとよいでしょう。ただし、2021年早々にauも同様のプランを発表することになっているので、それをみて3社を比較し、場合によってはauの新料金プラン発表後にドコモとソフトバンクもプラン内容を変更する可能性もあるため、サービス直前まで待ってしっかりと見極めた方が良いでしょう。
一番オトクな料金プラン
ドコモとソフトバンクは、20GBのプランだけではなく大容量プランについても新しい料金を発表しています。更にソフトバンクに関しては、サブブランドであるワイモバイルも新しい料金プランを発表していますので、新しいプランが多数あり、どのプランが一番オトクなのか非常にわかりづらくなっています。
小容量・中容量で一番オトクな料金プラン
では、まず初めに20GBのプランも含めて小容量・中容量の料金は、どのプランが一番オトクなのか見てみましょう。
ドコモもソフトバンクも7GB以下のプランについては今回料金を変更していません。ただし、ソフトバンクは、ワイモバイルの小容量、中容量の料金値下げをしています。新しい20GBの新料金プラン、ワイモバイルの新料金プラン、既存プランを比較すると以下のようになります。
3GB以下のプランはサブブランドのUQモバイルとワイモバイルが1,980円で最安料金となりますが、4GB以上では今回発表されたahamoとSoftbank on LINEが2,980円で最安料金となります。ドコモのギガライト、auのピタットプラン、ソフトバンクのミニフィットプランの料金を見れば、今回発表された料金が如何に安いかがわかります。
ただし、ahamoとSoftbank on LINEはオンラインのみの手続きとなりますので、どうしても窓口での対応が必要なユーザはサブブランドを選択することになるでしょう。10GBまではUQモバイルやワイモバイルもahamoなどと同じ2,980円ですが、それ以降ではワイモバイルの3,780円が最安料金となるため、ahamoなどよりは月額で800円ほど高くなります。しかしながら、家族割りなど既に割引サービスが適用されている場合には、この差額は更に小さくなるので、一度現時点でどのような割引サービスが適用されているのかを確認した方がいいでしょう。
まだ新プランを発表していないauですが、20GBのプランに関しては選択するユーザ数が多く収益への影響が大きいので、あえて無理をした料金値下げは行わず、恐らくahamoやSoftbank on LINEと同じ2,980円で提供してくると想定されます。
大容量プランで一番オトクな料金プラン
大容量プランでは、ドコモはこれまで最大のデータ利用量が60GBとしていましたが、5G向けのプランに関してはデータ利用量を無制限とし、料金も従来より1,000円引きの6,650円とした「5Gギガホプレミア」プランを発表しました。このプランの凄いところは、データ利用量無制限にテザリングも含まれているという点です。従って、これまでスマホと共にPC通信用にモバイルWi-Fiを契約していたユーザは、5Gギガホプレミアプランを契約することでモバイルWi-Fiを契約する必要がなくなります。4Gに関しては、データ利用量が60GBまでと制限されていますが、5Gよりも100円安い6,550円の「ギガホプレミア」として提供されます。
一方、ソフトバンクは、これまでの大容量プラン「メリハリプラン」では、最大で50GBで8,480円とドコモやauと比較してもかなり高額でした。しかし、今回発表された新しいプラン「メリハリ無制限」は、データ利用量を無制限とし、料金も従来の料金から1,900円引きの6,580円とかなり安いプランにしています。しかも、この無制限プランは4G/5Gを区別せず両方ともこの料金で利用できることが特長の一つです。 では大容量プランの料金を比較してみましょう。まだ値下げプランを発表していないauの大容量プランも一緒にグラフ化してみました。
ドコモの新プランとソフトバンクの新プランはほぼ同じような料金で差がありませんが、auの料金がかなり高くなっています。これまで、データ利用量無制限プランはauが積極的に提供してきたのですが、見てのとおり、それらのプランよりも今回発表されたプランはかなり安くなっています。今回、如何にドコモやソフトバンクが新プランに力を入れているかがわかります。
気になるソフトバンクの料金戦略
ソフトバンクは、12月22日の発表会で以下のように「大容量」「中容量」「小容量」をそれぞれ、ソフトバンク、ワイモバイル、LINE MOBILEと3つのブランドで分けて提供すると発表しています。ソフトバンクがこれを発表して以降、非常にバランスの良い料金戦略であるとの評判が立っておりますが、本当にそうでしょうか?

ソフトバンクには、先ほど紹介したとおり段階的に料金が上がる小容量プラン「ミニフィットプラン」が存在します。今回の料金改定では、この「ミニフィットプラン」が全く変更されなかったため、料金プランのバランスが少しおかしなことになっています。 以下は、ソフトバンクの「ミニフィットプラン」「メリハリ無制限」「Softbank on LINE(LINE MOBILE)」の料金を比較したグラフです。
「ミニフィットプラン」は1GBから使える小容量向けのプランです。グラフを見てのとおり1GBでは「ミニフィットプラン」が「メリハリ無制限」よりも安くなっていますが、2GB以降では「メリハリ無制限」の方が安くなっています。もちろん、Softbank on LINEやこのグラフには掲載されていないワイモバイルの方が小容量プランは安いのですが、ソフトバンクの窓口で契約をしたいというユーザは「ミニフィットプラン」か「メリハリ無制限」のどちらかを選択することになります。
1GB向けの一番小さなデータ容量のプランは、ガラケーユーザなど初めてスマホを利用するユーザに勧めるプランになると想定されますが、ソフトバンクにはこれらのユーザ向けに「スマホデビュープラン」というもっと安いプランがあり、データ利用量1GBで契約翌月から12か月間は月額900円、14か月目以降は1,980円という内容で提供されています。
したがって、この料金体系であるならば、もはや「ミニフィットプラン」は不要となります。先日の発表会で「ミニフィットプラン」についても必要があれば見直す予定があるとの報告があったので、もしかしたら今後何かしらの改訂があるかもしれません。
出遅れたauの料金施策とは!?
まだ新料金を発表していないauは、どのような料金プランを考えているのでしょうか?
まず20GBのプランですが、このプランは恐らく他社と同じ料金2,980円で提供してくる可能性が高いでしょう。
通信事業者にとって優良なユーザは利益率の高い大容量プランを契約してくれるユーザです。通信ネットワークの負荷はヘビーユーザによる過度なデータ利用が原因と言われており、大容量プランのユーザのほぼすべてがそれにあたると考える方もいるかもしれませんが、それは違います。実際は、大容量プランのユーザであってもほとんどのユーザはそれほど多くのデータを利用していません。先日総務省が発表しましたが、実際に1ヶ月に20GB以上利用しているユーザは全体の約10%です。
つまり、多数の大容量ユーザはそれほどデータやネットワークを利用せずに多額の月額料金を払ってくれるため、通信事業者としては非常にありがたく、その為、各通信事業者は大容量プランのユーザを増やすことに注力をしています。これらのユーザが月額料金の安い20GBプランへ移行してしまうことで、事業者の収益インパクトはかなり大きくなってしまいます。従って、auは20GBプランについては敢えて攻めず、かといって他社より高いのではユーザを取られてしまう為、他社と同額の2,980円で提供するのではないでしょうか。
一方、データ通信無制限の大容量プランについては、大幅に料金改定やプランの内容変更が行われるのではないかと期待されます。先ほど説明したとおり、大容量プランのユーザは通信事業者にとって優良ユーザであり、中でもauはデータ利用無制限プランを数種類提供するほど力を入れています。この大容量プランのユーザを更に獲得することを目的に、先日もAmazon PrimeやDAZNとのパッケージプランを発表しています。新しい施策が単なる値下げであれば他社の追随も容易ですので、値下げと合わせて、これまでのように様々なサービスとのパッケージプランなどで更なる工夫があるのではないでしょうか。
ドコモとソフトバンクが一部のサービスを3月から開始する予定としている為、auとしてもこれら2社に遅れを取るわけにはいかず、1月早々には何かしらの発表があるでしょう。