携帯料金は本当に高いのか?4割削減はいつから始まるのか?

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2020年9月16日、第99代総理大臣として菅 義偉首相が誕生しました。総裁選で圧倒的な力を見せた菅首相ですが、早速新しい取り組みを行っており、その中の一つとして「携帯電話料金の値下げ」があります。

携帯料金の値下げに関しては、菅首相は以前から日本国内の携帯電話料金は海外と比較して高く、現在の料金よりも4割は値下げが可能であると主張しています。そして、首相就任後、携帯料金値下げ検討について総務大臣に指示をしています。

実際、日本の携帯電話料金は海外と比較して高いのでしょうか?また、4割値下げを行う場合、いつごろから値下げが始まるのでしょうか?

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国内事業者の料金プラン

日本では長い間、ドコモ、au、ソフトバンクの3社が携帯電話サービスを提供してきましたが、今年の4月から13年ぶりに4社目の携帯電話会社として楽天モバイルが参入しました。

各社の現在の料金プランはどのようになっているのでしょうか?

以下は携帯電話事業者4社ならびにKDDIとソフトバンクのサブブランドであるUQモバイルとワイモバイルの4G LTEの料金プランです。

楽天モバイル以外の各社は、データ通信を頻繁に行わないユーザ向けの小容量プランと、ヘビーユーザ向けの大容量プランの二つのプランでサービスを提供しています。

小容量プランでは、利用するデータ量が増えるにつれて料金も高くなり、最大で利用できるデータ量が各社であらかじめ決められています。ドコモとauは最大7GBまで、ソフトバンクは5GBまで、UQモバイルとワイモバイルは3GBまでとなっています。最大利用可能データ量を超えた場合、通信速度が抑制され最大でも128kbps程度になるなど、かなり速度が遅くなります。

一方、大容量プランでは、ユーザが数十GBを利用することを想定している為、データ利用量が少ない場合は割高になりますが、毎月数十GB利用するユーザが安心して利用できるように利用可能なデータ量がかなり多くなっています。各社の大容量プランは以下のようになっています。

ドコモのギガホプランでは、毎月30GBmで利用できますが、現在はキャンペーンにより30GBの倍の60GBまで利用することができます。

ソフトバンクのメリハリプランでは、毎月50GBまで利用することができ、仮に1ヶ月のデータ利用量が2GB以下であった場合には、基本料金から1,500円が割り引かれます。

auはドコモやソフトバンクとは異なり、完全なデータ使い放題としてデータMAX 4G LTEを提供しています。テザリングや海外ローミングでの利用は30GBに制限されますが、国内でスマホを利用する際には無制限で利用できますので、日頃動画など大容量データのやりとりが多いユーザにとっては魅力的であり、安心して利用できるプランになっています。

auやソフトバンクのサブブランドであるUQモバイルやワイモバイルは、毎月の料金を安くすることでドコモ、au、ソフトバンクとの差別化を行っており、3GB以下の利用であれば、UQモバイルは1,980円、ワイモバイルは2,680円と安い設定になっています。また、3GB以上利用するユーザに対してはUQモバイルは10GBまで利用可能なプランを2,980円で、ワイモバイルは14GBまで利用できるプランを4,680円で提供しています。ドコモなどのキャリアとの違いは、余りデータ通信を行わないユーザ向けの安いプランであっても料金はデータ利用量に関係なく一律の料金になっているということです。

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ドコモなどのキャリア系やUQモバイルなどのサブブランド系とは異なる料金プランを提供している通信事業者が、2020年4月に新たにモバイル事業に参入した楽天モバイルです。

楽天モバイルは、データ利用量無制限で毎月の料金が2,980円一律というサービスを提供しています。他社と比較して料金が安いのと共に、データ利用についてはテザリングも含めて使い放題であること、そして他社は一定期間においてデータ消費が多い場合には一時的に速度が制限される仕組みを取り入れていますが、楽天モバイルではそのような速度制限もなく、完全データ通信使い放題なサービスとなっています。

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それでは、データ利用量ごとに各社の料金プランを比較してみましょう。

毎月のデータ利用量が1-3GB、3-5GB、5-7GB、10-30GBの料金について比較しています。

ドコモ、au、ソフトバンクの3社においては、1-7GBのデータ利用量では若干ソフトバンクの料金が高くなっていますが、ほぼ同じような料金となっています。それと比較して、楽天モバイルやUQモバイル、ワイモバイルの料金は安く、データ利用量が大きくなるにつれてドコモなどと比較して料金格差が大きくなっていることがわかります

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海外事業者との料金比較、日本の携帯料金は高いのか?

海外のキャリアの通信料金はどのようになっているのでしょうか?

米国のVerizon、韓国のSKT、英国のVodafone UK、ドイツのVodafone Germany、オーストラリアのTelstraの料金と国内通信事業者の料金を比較してみました。

毎月のデータ利用量が1GBでは、国内通信事業者の料金は海外と比較してほぼ同程度の料金水準となっていますが、データ量が3GB、5GB、7GBと増えるにつれて米国や欧州と比較すると料金が高くなっています。特に10GB以上では、英国やドイツと比較すると2倍近い料金となっていることがわかります。実は、これには理由があります

先ほど国内の料金比較表を見たとおり、日本国内では毎月のデータ利用量が5GBや7GBを境にして料金設定が行われています。7GB以下の場合は、1GB、2GBなデータ利用量ごとに細かく料金設定がされますが、5GBもしくは7GB以降はほぼ一律の料金体系となっています。

5GB/7GB以降の料金は、最大で利用できるデータ量を考慮した設定になっており、ドコモの場合は30GB、ソフトバンクの場合は50GB、auの場合は無制限利用することを想定した一律の料金設定になっています。よって30GBの料金と7GBの料金が同じなので当然7GBの料金は割高であり、これは10GBや15GBでも同じことがいえます。

一方、海外の通信事業者は、7GB以降も10GB、20GB、20GB、45GB、1000GB、180GBなど細かく料金設定がされており、当然この中でデータ利用量が少ない10GBが一番安く、180GBが一番高くなっています。つまり大容量通信においてもデータ利用量にあった料金設定になっているので、日本国内の料金と比較すると安くなっているように見えます

では、1ヶ月に180GBのデータを利用した場合の料金を比較した場合、どのようになるのでしょうか?以下のグラフは毎月のデータ利用量が180GBの場合の料金比較をしたものです。

Vodafone Germanyは45GB以上のプランが見当たらなかったので比較対象から外しています。

Tesltra以外はデータ利用量180GBの料金プランはない為、180GBのデータを利用するためにはそれ以上の料金プランでなくてはなりませんが、見てのとおりTelstra以外ではすべての国において無制限使い放題の料金設定が適用されていますので、Telstra以外は同じ条件での料金設定になります。

日本の料金はデータ利用量無制限プランがあるauの料金7650円/月としていますが、このグラフを見ると英国の料金よりは高くなっているものの、米国とは同水準であり、韓国やオーストラリアよりは安くなっています。

このように料金の比較においては、5GB/7GBを境に料金が大きく変わる日本の料金体系と、大容量のデータ利用量においても細かく料金設定がある海外の料金体系では、比較する際のデータ利用量によって比較結果が大きく変わり、データ利用量が5GB/7GBより大きい場合には、データ利用量が大きくなればなるほど海外の通信事業者との料金差分は小さくなります

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海外事業者と国内事業者の品質比較

通信料金の高い・安いという判断は、ユーザの満足度に依存し、通信においてはデータの通信速度とシステムの稼働率がユーザの満足度に影響を与える要因の一部になっています

以下はOpensignal社のレポート「The state of Mobile network experience」で報告されている各国のデータダウンロード速度とLTEの稼働率を比較したものです。

まず、データダウンロード速度ですが、日本のダウンロード速度は49.3Mbpsとなっており、韓国の59Mbpsには劣るものの、米国、英国、ドイツ、オーストラリアと比較するとかなり良い結果になっています。特に英国の22.9Mbpsと比較すると倍以上の速度が出ています

次に稼働率ですが、日本の4G LTEの稼働率は98.5%と非常に高く安定しており、これは今回比較している6か国の中で最も高い値になっています。

日本以外では米国が96.1%、韓国が98.3%と日本同様に非常に高い値となっていますが、欧州では英国が89.2%、ドイツが85.8%と値が低くなっています

通信速度とシステムの稼働率以外では、サービスエリア(カバレッジ)もユーザ満足度に直結する品質の指標として重要なのですが、こちらのレポートにはカバレッジに関する情報は掲載されていません。しかしながら、海外渡航を頻繁にされているユーザは気が付いているかと思いますが、海外、特に欧州ではスマホを利用していると結構な確率で4Gから3Gに切り替わります。また圏外となり通信ができないエリアも時折見受けられます

日本国内では、4G LTEのカバー率が高く普通の生活において圏外になることはほぼなく、4Gから3Gへ切り替わることもほぼありません。このようにエリアカバレッジに関しても日本と海外とでは大きな差があります。

日本の携帯電話の料金は確かに英国やドイツと比較すると高くなっていますが、通信速度やシステムの安定性などの品質面で比較すると、この2か国と比較してかなり品質が高く、料金は品質に見合った水準であり、一概に日本の携帯電話料金が高いということはいえないのではないかと考えれれます

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過去の総務省主導の料金施策とその効果

携帯電話の端末料金や利用料金に関する総務省主導の是正は今回が初めてではなく、過去に何度か行っています

そのうちの一つとしてゼロ円端末規制があります。

まだ今のようにスマホがなくガラケーのみであった時代、海外ではスマホが普及し始めていたにもかかわらず国内ではスマホシフトが進みませんでした。海外ではアップルを始めサムスン、HTCなど世界で桁違いに端末を販売するメーカーが出てきている中、日本からはグローバルに広く展開できている端末メーカーがありませんでした。

総務省は、この原因は国内の通信事業者が端末を0円で販売することにあると考えたのです。

国内の通信事業者は、ユーザ数を増やすために端末奨励金として自ら端末代金を負担することで端末を0円で販売していました。この施策により、かなりの数の端末が国内だけで売れる為、端末メーカーはわざわざ海外展開をする必要がなかったのです。この状況を見て総務省は、この仕組みが端末メーカーの海外進出を阻害していると考え、ゼロ円端末の販売を禁止し、そうすることで端末メーカーはグローバルで通用するユニバーサルな端末を開発し、それまでよりもグローバルに広く展開していくことになると考えたのです。

この総務省の施策ですが、結果として想定どおりにはならず、端末価格の上昇と国内端末メーカーの終焉を迎えただけでした。この施策が行われる以前は、年間数千万台以上の端末が国内で売れており、カシオ日立モバイルコミュニケーションズ、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、ソニーモバイルコミュニケーションズなど多くの端末メーカーが存在しましたが、0円端末の廃止により端末は売れなくなり、結果としてほとんどの国内端末メーカーは解散してしまいました。もちろん、端末メーカーの解散はこれだけが原因ではありませんが、この施策が少なからず影響していたことは間違いありません。

最近では、2019年10月から開始した「端末割引金額の制限(端末分離プラン)」が総務省が主導した携帯料金に関する施策です。

端末分離プラン開始後のスマホ新料金プラン比較!
10月からドコモ、au、ソフトバンクの料金プランが変更になります。これは総務省が進めている省令改正を遵守する為の対応となりますが、省令改正の内容と総務省の狙い、各通信事業者の10月以降の料金プラン比較、ユーザへの影響とおトクに利用する方法...

総務省は、「携帯電話の販売代理店の一部において大幅な端末値引きや高額なキャッシュバック等が行われていることが、端末価格や通信料金の負担について消費者が正確に理解することを困難にし、利用者間の公平性の観点から問題である」と考え、端末価格に関して20,000円以上の割引きを行うことを禁止しました。

この対応が行われてから1年経過しましたが、結果としては端末の金額が上がりユーザ負担は増え、また端末の金額上昇により端末の販売台数も減少しています。期待していた通信事業者の料金値下げですが、通信事業者各社はこれが施行される以前からデータ利用量に合わせて変動する料金プランを入れることで料金の低減を図っているということを理由に、この施策が始まったことによる更なる料金値下げは行っていません

このように、これまで総務省が中心となって携帯電話関連の料金について何度か議論が行われ、いくつかの施策が行われましたが、いずれも成功したとはいえないのではないでしょうか

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値下げはいつから始まるのか、そしてどのくらい安くなるのか?

菅内閣が発足し、携帯電話料金を下げる検討は既に始まっていますが、実現するとなるといつ頃からになるのでしょうか?

2019年10月から始まった端末金額割引の制限などの施策では、その1年前から総務省主催の研究会で検討が始まり、施策の実行までおよそ1年がかかっています。ただし、通信事業者各社は常にこれらの議論の内容を注視し、その方向性が見えてきた段階で対応を行ってきています。

従って、仮に来月から何かしらの研究会が総務省の基で立ち上がった場合、具体的な施策の施行はおよそ1年後になることが想定され、この研究会の議論の内容を見据えて通信事業者各社は施策が施行される数か月前には料金を見直すことが考えられますので、来年の半ばには何かしら料金プランが変わることが想定されます

では、実際に料金が下がる場合、どの程度下がるのでしょうか?

2020年9月25日にKDDIが新機種・新サービス発表会を行い、その場において菅総理が主導している「携帯電話の料金値下げ」について高橋社長がコメントしています。高橋社長は、料金値下げについては真摯に受け止めるとしながらも、auは今後は全ての端末を5G対応とし、リーズナブルな料金設定に関してはUQモバイルで対応すると話をしています。

5Gサービス開始から4か月のエリア、料金、スマホ販売の状況は?
2020年3月の5Gサービス開始当初は利用可能エリアや対応スマホは限定的であったが、4か月後の現在の状況は?この記事では、2020年7月末時点のドコモ、au、ソフトバンクの5Gの料金プラン、サービス提供エリア、5G対応スマホ端末について解説。

このコメントから想定すると、auブランドに関しては多少の料金プラン変更はあるものの大幅な料金低下は恐らくなく、安い料金のサービスはこれまでと同様にUQモバイルで対応していくことになるのではないかと考えられます。ドコモやソフトバンクもauの動向を見ながら歩調を合わせていくのではないでしょうか

5Gへシフトすることにより、これまでのデータ利用量に基づく料金設定からデータ利用無制限のフラット料金プランが主流になってきます。データ利用量無制限プランの料金設定については、先の180GB/月利用時の料金と同様に海外の事業者との差もほとんどなく割高感がないので、料金が大幅に下がることは無いでしょうただし、何かしら料金が下がったように見えるようにするため、既にKDDIが積極的に行っているような他のサービス、例えば動画見放題サービスなどとバンドルした料金プランにすることで、通信料金が実質値下げされているようなプランが多数出てくる可能性があります

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携帯料金の議論は大切であるが簡単ではない

このように、携帯電話に関する料金の議論は過去にも何度か行われてきましたが、いずれも成功したとは言い難い結果となっています。菅首相が言うように、公共の電波を利用し、携帯電話が国民のライフラインである状況において国民が不利益を被るような料金体系であるならば何かしらの是正は必要ですが、確実に成果を出すためには一度過去の議論と結果を見直し、それらを踏まえて慎重に取り組むべきではないか思われます