iPhoneも対応しているeSIMとは?メリットや仕組みを解説

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iPhoneも対応し始めたeSIMとはいったいどのようなものなのでしょうか?eSIMの仕組みを知り、これを上手に利用することで新しいビジネスチャンスが生まれる可能性があります。またコンシューマにおいてはiPhoneなどのスマホでeSIMを利用することで様々な利点があります。

eSIMとはどのようなものであり、どのような仕組みになっているのか?eSIMのメリットや今後の展望と合わせてわかりやすく解説しています。

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iPhoneもサポートし始めたeSIMとは?

最近eSIMという言葉をよく聞くようになりましたが、これはiPhone XS/XR以降、eSIMがサポートされたことが大きな要因であると考えられます。

もともと日本の通信環境においては、通信事業者が端末とSIMをセットにして販売していたためユーザはSIMを意識することはありませんでした。ところが、iPhoneがeSIMを搭載し、また最近では格安SIMスマホが人気を集めていることもあり、以前よりはSIMに関心をするようになってきています。

SIMはSubscriber Identity Module Cardの略であり、主にユーザが通信を行う為の認証に利用されます。そのため、SIMカードにはいくつか認証に利用するための情報が入っており、主なものとしてICCID、IMSI、MSISDNという情報が格納されています。

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SIMカードにはいくつか種類がありますが大きく二つに分かれ、一つはプラスチックでできた物理的なSIMであり、もう一つが今回解説するeSIMと呼ばれるソフトウェアのSIMです。

eSIMはembedded SIMの略で物理的なカードではなくソフトウェアで制御されたSIMであり、あらかじめ端末に組み込まれています。この端末に組み込まれたeSIMに対して通信ネットワークから必要なデータをダウンロードして物理的なSIMカードと同様に利用することができます。

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eSIMを利用するメリット

eSIMの大きなメリットの一つは、何といってもSIMカード用の物理的なスペースが不要ということです。

通常、スマホであればSIMカードを入れるスロットが準備されていますが、eSIMにすることでこのSIMカードスロットが不要となります。最近のスマホの中ではSIMカードを2枚利用できるデュアルSIM対応スマホがいくつかありますが、その中でもiPhoneに関してはSIMカードスロットを2つ設けるのではなく、1枚は物理的なSIMに対応し、もう1枚はeSIMに対応しています。通常であればデュアルSIMに対応する場合は新たにSIMカードスロットを設けなければなりませんが、eSIMを採用することで新たにSIMカードスロットを設ける必要が無く、これまでのスマホのデザインを維持できるというメリットがあります。

また、スマホであれば物理的なSIMカードスロットを設けることもそれほど難しくありませんが、IoTデバイスに関してはデバイスのサイズが小さいため、そもそもSIMカードスロットを準備することが難しいものも多々あります。特に今後ますます広がるであろうセンサー系のIoTやウェアラブルのようにSIMカードスロットを設けることが難しいものに対してはeSIMは非常にメリットがると言えます。

eSIMのもう一つのメリットは、ユーザ主導で契約先の通信事業者の変更が可能ということです通常、ユーザが契約する通信事業者を変更する場合には、変更先の通信事業者からSIMカードを受け、そのSIMカードを差し替えて通信事業者を変更しますが、eSIMの場合には端末側でユーザが操作を行うことで契約する通信事業者の変更を行うことが可能なのです。

ユーザは、それほど頻繁に通信事業者の変更を行うことは無いので、それであればeSIMなど不要ではないかと考える方もいるかと思います。しかし、例えば海外に行った場合はどうでしょうか?

海外旅行や海外出張など、短期間で海外に行く場合、最近は海外で使えるWi-Fiルータを日本から持参し、現地で通信を確保するユーザが多いのではないかと思います。このWi-Fiルータの代わりにeSIMを利用することで、ユーザは海外渡航前にeSIMで利用するプロファイル(通信に必要なデータ)を端末に書き込んでおき、現地に到着したらそのeSIMのユーザに切り替えるという使い方が可能となります

この時のメリットとしては、1つはコストです。Wi-Fiルータは通信事業者の国際ローミングサービスを利用するよりは料金が安くなりますが、それでも1日当たり1,500円から2,000円の料金がかかるため、1週間の海外渡航となると10,000円以上になってしまいます。しかも、レンタル開始から終了までの期間には渡航時間も含まれてしまうため、実質の日単価はかなり高くなってしまいます。

このWi-Fiルータの代わりにeSIMを利用して渡航先の通信事業者が提供している安いサービス、例えば

香港の通信事業者Threeが提供している海外データeSIMではアメリカ、オーストラリア、フランスなど多数の国で使え4GBまでデータ通信が可能で7日間の有効期限があるプランでも2,000円以下ですみます。

海外のSIMを利用することに関しては、現地にてSIMを購入して利用することも可能ですが、SIMカードが売られているショップへ立ち寄り、かつ現地で設定を行う手間を考えるとeSIMで事前に設定ができるということは非常に便利です。

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eSIMの仕組みを解説

eSIMがどのような仕組みで使われているのかについて簡単に解説します。

ユーザは、接続先(通信を行いたい)通信事業者からeSIMのプロビジョニングに必要となる情報(プロファイル)を取得する必要がありますが、この情報を取得する方法は大きく二つあります

一つはQRコードを利用する方法です。通信事業者は、eSIMユーザが登録を行う為のサーバ(SM-DP+)への接続用QRコードを用意しており、ユーザはそのQRコードを読み取ることでSM-DP+へ接続することができます。

もう一つの方法は、専用アプリを利用する方法です。通信事業者によってはeSIMユーザの登録用に専用のアプリケーションを提供しています。ユーザはあらかじめ専用アプリをダウンロードしこのアプリケーションを利用することでSM-DP+へ接続することが可能となります。

SM-DP+に接続後は、通信に必要なプロファイル情報をダウンロードし、端末にインストールを行います。これで通信に必要な情報がすべて端末のeSIM(eUICC)に書き込まれ、ユーザはこの通信事業者で通信を行うことが可能となります。(通信事業者や端末種別によって、追加でAPN等の設定が必要な場合があります)

このようにeSIMによる通信事業者の切り替えは非常に簡単に行うことができます

eSIMの実情と今後の展望

このようにeSIMはユーザにとって非常に簡単に通信事業者の切り替えができ、とても便利な機能ではありますが、日本国内ではまだまだ普及していません。何故でしょうか?

eSIMを利用するためには通信事業者がeSIMに対応したネットワークを準備する必要がありますが、国内の大手通信事業者は国内で利用可能なeSIMのサービスを提供していません。これは、ユーザにとって便利なeSIMが通信事業者の立場ではeSIMは脅威となっているからです。

ユーザが簡単に通信事業者の切り替えができてしまうということは、ユーザが簡単に他の通信事業者に乗り換えができてしまうということなのです。これまで通信事業者は如何に加入者の解約(他通信事業者への移行)を防ぐかということに注力しており、他の通信事業者のSIMを利用できなくするSIMロックや2年間の契約縛りなど様々な手段を用いて解約阻止に力を注いできました。eSIMの利用を開放するということはこれまでの施策と全く逆の施策を行うことを意味しており、したがって通信事業者の立場では国内でのeSIM利用を積極的に行いたくないのです。

このような状況であるため、IoT関連で比較的広まりつつあるeSIMも国内のスマホでは今後も当面利用することが難しいと考えられます。一方で海外では既に多数の通信事業者がeSIMサービスを提供しており、国内通信事業者も海外渡航時向けのeSIMサービスの提供は行っているため、当面はeSIMは海外への渡航時に利用することが主な目的となるでしょう。ただし、iPhoneのXS、XR以降ではeSIMがサポートされ、今後は確実にeSIMを利用できる端末が増えていくため、それに合わせてeSIMの利用できる環境が急に大きく変わる可能性があり、まだまだ目が離せない状況です