スポーツビジネスの未来を各界著名人がディスカッション

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スポーツ界、IT業界を代表するメンバーが集結

楽天グループが主催の「Rakuten OPTIMISM 2019」において、Jリーグチェアマン、元プロ野球監督、IT企業社長を迎えてパネルディスカッションが行われました。Rakuten OPTIMISMがどんなものなのかについては以下に纏めてありますので、こちらを参照してください。

参考:Rakuten OPTIMISMに行ってきました

パネルディスカッションは、「スポーツビジネスの未来」をテーマとし、サッカー界、野球界、IT業界から以下の豪華な出演者を迎えて行われました。

楽天グループ会長兼社長:三木谷浩史
サーバーエージェント社長/町田ゼルビアオーナー:藤田晋
元プロ野球監督:古田敦也
Jリーグチェアマン:村井満

スポーツ界の現状

三木谷氏:前回のワールドカップではイタリアがヨーロッパ予選で敗退してしまい、その後のイタリアは国が非常に沈んでいた。ワールドカップに対する思いがそこまで強いのかと思っていたが、そうではなくて、サッカーはイタリア経済の3.5%を占める一大ビジネスになっていることがわかった。日本でもスポーツはビジネスとしての広がりがまだまだ期待できるのであるが、まずは今の野球、サッカー、そしてそれらをコンテンツとして扱うITとしてそれぞれの状況を教えてほしい。

村井氏: Jリーグは2017年からDAZNで全試合の配信を開始した。DAZNとの契約では10年で2,000億円という金額で契約したということだけが話題として広がっているが、それ以外でもDAZNとの契約によってこれまでのテレビ放送と大きく変わったことがある。

そもそもJリーグは、クラブが成長をするための環境をサポートすることが目的であり、集客を目的としたデジタル化などは各クラブチームに任せている。DAZNとの契約でのポイントは、著作権をJリーグが持っているということである。

地上波放送ではテレビ局が放映権を持っておりテレビ局が番組を作成していが、DAZNではJリーグが著作権を持っている為、カメラの設置位置、台数などすべてJリーグで指定して映像制作ができる。Jリーグは、これまで長い期間かけてヨーロッパサッカーなどから多数を学んでおり、必要な知識は膨大に蓄積されているので、この知識を駆使して臨場感のある映像を届ける工夫をすることができる。この違いは非常に大きい。

古田氏: 野球は、1993年ごろがピークであり、当時はテレビ視聴率は20%を超えていた。ところが、2004年には一気に冷え込み、この年に球界の再編問題があり、当時の球団数を維持することを希望する選手会と球団数を減らして1リーグ制に移行すべきというオーナー側で激しい議論が行われストライキにまで陥った。最終的には楽天の新規参入もあり2リーグ制は維持された。

それ以降はテレビの視聴率は上がっていないが、実は観客動員数はすごく伸びている。昔は、大洋ホエールズのチケットはいつでも買えたが、今は横浜ベイスターズのチケットを手に入れることが難しくなっている。そのくらい観客が増えている。

野球はプロ野球以外でも高校野球も人気があり、高校野球の試合はどの試合もたくさんの観客が詰めかけている。観客は、自分の地元のチームが出ているとどうしても応援したくなるという郷土愛が強い。

藤田氏: 過去に東京ヴェルディに携わったが、失敗してしまった経緯がある。最近、イニエスタに35億円を支払ったということがあり、このお金の使い方が非常にいいと感じた。イニエスタに35億円を投じることによる社会貢献意義が非常に大きいなと感じ、町田ゼルビアを買収して再度Jリーグに参入することを決意した。

イニエスタが与えたJリーグへの影響は?

三木谷氏: イニエスタが来たことで、Jリーグにはどのような影響があったのか?

村井氏: イニエスタが来たことでホームゲームの入場者数はもちろん、対戦相手とのアウェーでの試合でも入場者数が大幅に伸び、今年は入場者数が過去最高をマークしている。バルセロナとレアルマドリードが対戦するエル・クラシコは30億人の人が見ていたとされているが、そこで活躍をしていた選手が来たことは大きい。最近は日本でプレーをしたいという外国人選手が増えてきているのことも事実。

世界のサッカーファン30億人に対するビジネスとは!?

三木谷氏: サッカーファンは世界で30億人いるといわれており、これはFacebookの会員数よりも多いが、今後のビジネスはどうなっていくのか?

古田氏: 野球はサッカーとは異なり世界で見るとパイが小さいが、日本のマーケットは大きい。プロ野球協会はJリーグとは異なり、リーグのマネジメントは行っておらずマネジメントは各球団に任せているが、これはそのうち頭打ちになる。例えば、放映権をリーグ側でマネジメントするようなことをしていくことで価値が上がるであろうし、まだまだやっていないことが多いので、Jリーグを参考にしながら、いろいろと取り入れていきたい。

日本のeスポーツはまだまだこれから

三木谷氏: 最近話題のeスポーツについてどのように考えているか。Eスポーツをオリンピック競技に入れるという議論もされているようであるが、あまり理解できないのではあるが・・・。

藤田: サイバーエージェントグループは国内で最大のeスポーツリーグを運営しており、競技人口だけみるとスポーツとして扱えるくらいの人数になっている。また、eスポーツは経済圏も大きいのでスポンサーが付きやすいことが特徴である。例えば、Abema TVではフットサルのFリーグのコンテンツを持っているがスポンサーが付きづらい状況であるのに対し、eスポーツはスポンサーがつくのでビジネスの観点でも立ち上げやすい。

ただ、いろいろと課題があり、例えば賞金に関しては参加費をそのまま賞金として扱ってしまうと、今の法律では賭博罪になってしまう。賞金はスポンサーに出してもらう必要があり、それであると海外と比較してスケールが落ちてしまう。

ゲームということに関していうと、友人の本田圭佑選手はゲーム好きな自分の子供には好きなようにゲームをさせているが、それと合わせて「世界一になれ」といっているようで、とても印象的であった。

古田氏: eスポーツがリアルスポーツにとって脅威になるかというと、そうではないと思う。スポーツの醍醐味は、自分ができないことを実践できるプロを見ることにあると感じている。例えば、野球をやっていてもスタジアムでホームランを打つことなど普通の人は到底できないと感じてしまう中で、それをやってのけるプロの選手の凄さを現地に見に来るのではないか。

マイニングベース

今後の展望は?

村井氏: Jリーグを世界のトップレベルのチームに育てたい。また、それと合わせて人を育てる世界屈指のリーグにしたいと考えている。

古田氏: 国内ではまだプロ野球チームがない地域がたくさんあるので、そういいう地域に新しい球団が増えるといいと思っている。その上で、国内で盛り上がっていってほしい。

藤田氏: 町田ゼルビアというチームを選んだのは、町田が東京にあるチームであるからである。「東京」というブランド力は大きいので、町田ゼルビアを育てて時間がかかるかもしれないが世界に認められるチームにしたい。