IoTという言葉が広まってずいぶん久しいですが、実施にIoTはどのくらい普及しているのでしょうか。日本でもようやくIoTを利用した監視や計測などの実証実験が頻繁に行われるようになり今後一気に普及することが想定されますが、世界の企業ではIoTに関してどのように考えているのでしょうか。
この記事では、IoTに積極的な企業の世界トップ500から、世界の企業がIoTをどのように捉え、そして今後どのように活用していくかについて紹介しています。
IoTに積極的な企業世界トップ500を発表! – 日本は上位にソフトバンクのみ –
まず初めにWorld IoT ConventionというIoTの国際組織が2018年に発表したIoTに積極的な企業のランキング「2018 World Internet of Things Ranking List Top 500」を見てみましょう。
このランキングでは世界の上位500社が掲載されています。上位10社を見てみると、Huawei、クアルコム、ボッシュ、Google、シスコ、チャイナユニコム、ボーダフォン、IBM、NXP、チャイナテレコムとなっており、ほぼ米国と中国で占められています。中国はかなり前からIoTに積極的であり、それを表すかのように通信事業者やデバイスメーカーがランキングに入っています。米国に関しては、IoTデバイスに必要となるチップセットベンダーやIoTで収集したデータの蓄積や分析を行うクラウドサービスプロバイダーがランクインしています。一方で日本企業は残念ながら上位にランキングはしておらず、41位のソフトバンクが最高位となっています。
地域別にみてみると以下のようになります。
見てのとおり、アジアは中国こそランキング上位につけていますが、それ以外では北米や欧州と比較すると低水準となっています。日本ではIoTという言葉は広まってはいるもののその普及は他国の上位の企業と比較するとまだまだこれからという状況になっています。
IoT導入企業はIoTをどう評価しているのか!?
IoTを既に導入している企業や導入を検討している企業はIoTをどのように捉えているのでしょうか。
以下はIoTについて様々な角度から行った調査をまとめたVodafoneが発行している「Vodafone IoT Barometer 2019」を参考に纏めたものになります。
35%の企業がIoTを利用 - IoTはビジネスに必要不可欠なものに –

まずはじめにIoTの導入状況ですが、調査対象企業全体の34%がIoTを導入済みであり、IoT導入済み企業の76%がIoTは既にビジネスに必要不可欠なものになっていると回答しています。また、86%のIoT導入済み企業がIoTの信頼性は増してきていると回答しています。
これまでIoTという言葉はバズワードとして広がりながらも具体的なユースケースや効果はあまり多く表に出てきていませんでしたが、ここへきてIoTの信頼性が増してきており、企業はIoTの重要性や必要性を以前にも増して感じているといえるでしょう。
IoT導入企業の95%が導入後に何かしらの恩恵を受けている
IoTの導入目的は、コスト削減、新規ビジネスの創出、人手不足解消などいろいろとあるかと思いますが、目的が何であれIoT導入企業の95%は導入後に何かしらの恩恵を受けています。そして、それらの企業の半数以上がIoTへの投資以上のリターンを得ています。特にIoTを積極的に取り入れている企業に関しては、その87%がIoT導入により利益を得ており、平均で22%の増益となっています。また、コスト削減という観点では、IoTの導入により平均で18%のコスト削減に成功しています。
IoTの導入によるその他の効果として、データ収集による効果があげられます。48%の企業は、IoT導入以前では社内の必要なデータの取得や把握ができていなかったが、IoTによりデータを正確に取得できるようになったことで47%の企業において社員の生産性が向上しています。
調査結果にはIoT導入による企業の満足度調査結果についての記載はありませんが、IoTを導入したことよって95%の企業が恩恵を受けているということであれば、満足度もそれなりに高く、確実にIoTを導入した意義があったといえるでしょう。
IoTをビジネスに直接活用

IoT導入済みの企業は、実際にIoTをどのように活用しているのでしょうか。
IoT導入企業の58%はIoTで収集したデータを分析してビジネスに直接活用しています。企業内にはビジネスを行う上で多数のデータが存在しますが、多くの企業ではデータを可視化できていません。例えば、ほとんどの企業では社員の毎月の稼働日数や稼働時間、営業成績などはデータ化できていますが、工場設備の稼働時間、故障率のデータ取集やそれらデータのデジタル化などはまだまだ実現できておらず、かつデータを活用しきれていない企業も多くあります。IoT導入企業では、このようなデータ収集やデジタル化によるデータの可視化をIoTで実現しビジネスに役立てています。その結果、IoT導入企業はIoTによるデータを活用することでIoT導入前よりもビジネスの決定に自信を持ち、約8割のIoT導入企業は今後もIoTに投資を行っていく予定であるとしています。また、IoT導入企業の74%はIoTを導入していない企業は今後5年以内に衰退していくと言っています。
企業が期待しているIoTの通信手段
IoTでもう一つ大事なことは、その通信手段です。IoTデバイスをつなぐ通信手段はIoTの利用目的に依存します。例えば、スマートメータやセキュリティ情報などは定刻に確実にデータを受信できるような時間的な信頼性の高い通信手段が必要であり、監視カメラやビデオ配信などでは安定した大容量のデータ送受信が可能な通信手段が必要となります。また、遠隔作業などでは遅延の小さい通信手段が必要となります。このようにIoTの利用目的によって通信手段が変わってきますが、IoT導入企業はどのように考えているのでしょうか?
IoTを導入している企業では、時間的な信頼性と安定した大容量データの送受信が可能な通信手段が重要であると考えており、72%の企業が定刻に送受信可能な通信手段が必要であり、70%の企業が10MB以上のデータ送受信が必要であると考えてります。定刻に確実にデータ通信を行い、かつ安定した大容量データ通信が可能な通信手段となるとセルラー網をはじめとする品質が担保されたインフラが必要となるでしょう。また、高品質かつ低遅延が要求されるとなると、今後日本でも始まる5Gも視野に入れていく必要がありそうです。
IoTによるデータのマネタイズはもう少し先

先ほど記載したとおり、企業はIoTによって収集されたデータをビジネスの決定に利用することを考えており、IoTを積極的に導入している企業の100%がそのように捉えています。また、IoTで収集したデータを分析しAIとの連携や社内の他のシステムとの連携により社内での活用を考えています。
一方で、収集や分析したデータを外販するなどのデータのマネタイズに関してはまだまだ慎重であり、当面はIoTで収集されたデータは企業内のビジネスで活用されることが主流となりそうです。 このように世界の企業はIoTを積極利用し成果を出してきている状況ですが、IoTの本格導入が今後期待されている日本でもまずは先行してIoTを導入している世界の企業を参考にしIoTを導入していくというのも一つの考えではないでしょうか。