自動車の展示会である東京モーターショーで通信事業者のドコモが展示を行いました。ドコモは東京モーターショーでどのような展示を行ったのか、注目する展示をピックアップして紹介しています。
東京モーターショーとは
東京モーターショーとは、2年に1回日本自動車工業会が開催している国内最大級の自動車ショーであり、自動車メーカーや部品メーカーが将来を見据えたコンセプトカーや最新技術を展示しています。以前は毎回100万人を超える来場者が訪れる人気の自動車ショーでしたが、近年は来場者数が減少傾向にあります。その為か、今年の東京モーターショーでは前回まで参加をしていたポルシェ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディが参加を見送り、輸入車がほとんど参加しないという少し寂しい状況になっています。
今年の東京モーターショーでは、自動車メーカーや部品メーカーと共にドコモがモビリティに関していくつか展示を行っていましたので、その中で「5G遠隔運転」「車載用5Gガラス」「コンシューマeSIMによるスマートフォンと車の連携」について簡単にレポートします。
5G遠隔運転
自動車業界では様々な技術革新が行われておりますが、その中でも自動運転技術に関しては自動車メーカー各社が非常に力を入れている分野です。自動運転にはいくつかレベルがあり、以下の国土交通省の資料のとおり自動ブレーキや前方の車を追随するレベル1、高速等で車線を維持しながら前方の車を追随するレベル2、そして完全な自動運転となるレベル5と5段階に分かれています。
現在の日本ではレベル2による自動運転機能を搭載した自動車がいくつか販売されていますが、自動車メーカーはレベル5を目指して日々研究を続けており、レベル5の実現に5Gを利用するという案も出てきています。この自動自動運転における5Gの役割については多少の誤解がある可能性があるので、簡単に説明をしておきます。
5Gの特徴の一つに低遅延通信がありますが、自動運転とは低遅延の5G通信を利用して実現するというものではありません。5Gは低遅延とはいえども無線通信であり、常に確実に安定した通信が可能な状況であるとは限りないため、自動運転に直接利用するということはまだまだリスクがあります。自動車の運転は人命にかかわるため、常に確実に実現できる技術でなければ採用はできないのです。
それでは、5Gは自動運転においてどのような役割があるのでしょうか?
現在検討されている役割としては、5Gの低遅延特性を活かして事前に危険察知を行いそれを回避するというものです。これが今回ドコモが展示していた「5G遠隔運転」です。つまり、自動運転自体は車体に取り付けられている複数の車載カメラ、センサーを利用して行われるのですが、それを補助することに5Gを利用するという試みです。
具体的には、車に遠隔監視用に複数の車載カメラを搭載し、自動運転中の自動車が走行する先、特に見えづらい曲がり角などにおいて障害物があったり歩行者がいたりする場合に遠隔で自動車を操作することで事故を防ぐという試みです。これを実現するためには、車載カメラで撮影した大容量の動画をリアルタイムで遠隔地まで送る必要がありますが、5Gが導入されることによりそれが可能となりました。
このように自動運転そのものに関しては自動車メーカー各社が様々な研究を行っていますが、ドコモはその自動運転を支えるために重要となる技術の開発と検討を行っているのです。先に記載したとおり、通信技術を直接自動運転に利用することはまだまだ難しい状況である一方で、それを支える仕組みに通信を利用するという試みは今後ますます広がるとともに重要になってくるでしょう。
5Gとは? – 特徴やいつから開始されるのかを簡単に解説 –
車載用5Gガラスアンテナ
5Gで利用する周波数は、6GHz以下の通称Sub-6と呼ばれる周波数と28GHz帯などこれまでスマホで利用されてきた800MHzや2GHzなどと比較すると非常に高い周波数になりまます。周波数が高くなるとその特性から電波の直進性が強くなり、電波が障害物にぶつかった場合の減衰が大きくなります。極端なケースでは、例えばアンテナと端末の間に木があるような状況において、その葉っぱが風に揺れるだけで通信速度に影響を及ぼすこともあります。このように減衰の激しい周波数を利用する5Gでは、如何にして受信感度を上げていくかということも課題となり、ドコモの5Gガラスアンテナはその課題を克服するための試みとなります。
スマホであれば車の中であろうが外であろうが特に大きく変わることなく通信ができますが、5Gで高い周波数を利用した場合、車の中と外では環境が全く異なります。先の説明のとおり、5Gの周波数は減衰が激しく、たとえ窓ガラスであっても相当電波が弱まってしまう為、車内で良い通信環境を保つことは容易ではありません。ドコモはこれを改善するために自動車のガラスをアンテナにするという取り組みを行っています。
自動車のガラスをアンテナにすることにより複数のアンテナを設置することができ、また前後左右いずれにもアンテナを設置することが可能となるため、様々な方向からの電波を受信するメリットがあります。また、5G用に特別なアンテナを自動車に搭載する場合と比較してして自動車のデザインを損なわないということもメリットの一つになります。
写真でみるとおり少し薄い黄色みを帯びていおり実用性にはもう少し時間がかかるように思われますが、非常に面白い取り組みです。現時点でもネットワークと接続可能な車種は多数ありますが、今後はますます増えていずれは全ての車がネットワークに接続する時代が来ると想定されますので、このようなガラスを利用したアンテナという取り組みは非常に重要であると感じています。

コンシューマeSIMによるスマートフォンと車の連携
最後にドコモのeSIMに関する取り組みを紹介しておきます。
「コンシューマeSIMによるスマートフォンと車の連携」という題目で紹介されていましたが、これはeSIMと呼ばれるソフトウェアで更新可能なSIMに対応したデバイスを簡単に通信可能な状態にすることが可能となる技術です。
ドコモのコンシューマeSIMでは、契約しているスマートフォンを利用することで非常に簡単にeSIM対応デバイスに回線登録が可能となり、例えばeSIMを搭載した車であればそれを利用することで車内で音声通話やデータ通信を楽しむことも可能となります。
eSIMに関しては最近少しずつ普及はしてきましたが、それでもまだまだコンシューマ領域では広がっていないので、今後の普及に期待したいところです。
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コネクティッドカーに力を入れるドコモ
今回ドコモは自動車の祭典である東京モーターショーで展示を行っていましたが、各展示とも遠い将来を見据えた現実離れをしたものではなく今すぐにでも使えそうな技術であることから、コネクティッドカーに非常に注力をしていることが伺えます。5Gが開始される2020年春以降、これらの技術の商用化が一気に進む可能性があり、今後のドコモの取り組みが非常に楽しみですね。